日本化学会

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カルボン酸とアミンとの触媒的縮合反応

Catalytic Condensation of Carboxylic Acids with Amines

 カルボン酸とアルコールとの脱水縮合がプロトン酸触媒により円滑に進行することとは対照的にカルボン酸とアミンを触媒的に脱水縮合し,アミド結合を形成することは今なお困難な課題である。そのため,化学量論量の縮合剤の利用が第一選択となるが,触媒的縮合反応は環境調和性の観点より望ましい1, 2)
 柴崎,熊谷らはB3NO2からなるヘテロ六員環化合物ジオキサアザトリボリナン(DATB)をはじめて合成し,縮合反応の優れた触媒となることを報告した3, 4)。DATB 誘導体1 の環境の異なる2 種類のホウ素のうち両酸素に挟まれたB 1 が比較的高いLewis 酸性を示し,ピリジンと位置選択的に錯体A を形成した。これらのことより筆者らはカルボン酸とアミンとの縮合反応の遷移状態をDATB の3 つのホウ素によりアダマンタン型構造B として安定化できると考えた。実際に,1は嵩高いカルボン酸とベンジルアミンとの縮合反応に中程度の触媒活性を示した。一方,DATB と類似の骨格であるボロキシン(B3O3)は触媒活性を示さない。これはDATBとボロキシンの加水分解に対する安定性の違いを反映している。最終的にDATB 誘導体2 が高い触媒活性を示すことを明らかにした。ごく最近,DATB 誘導体2 がペプチド合成にも適用できることが報告された4)

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1) J. W. Bode et al., Nature 2011, 480, 471.
2) 例えば,ボロン酸誘導体が触媒として機能することが報告されている.H. Yamamotoet al., J. Org. Chem. 1996, 61, 4196.
3) M. Shibasaki, N. Kumagai et al., Nat.Chem. 2017, 9, 571.
4) M. Shibasaki, N. Kumagai et al., Org. Lett.2018, 20, 612.

岩﨑孝紀 大阪大学大学院工学研究科