日本化学会

閉じる

トップ>新着情報 >お知らせ >小川正孝のニッポニウム研究資料など5件を認定 - 第4回化学遺産認定

小川正孝のニッポニウム研究資料など5件を認定 - 第4回化学遺産認定

日本化学会の化学遺産委員会(委員長・植村榮京都大学名誉教授)は3月13日(水)、化学会館で開催された記者会見で、第4回化学遺産に第018号から022号の5件を認定したと発表した。滋賀県の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで行われる第93春季年会のなかで開催される第7回化学遺産市民講座で詳細について講演が行われる。
第4回化学遺産認定は以下の通り。

認定化学遺産 第018号 『小川正孝のニッポニウム研究資料』

小川正孝(1865 ~ 1930)は東京帝国大学の第1回卒業生で,日本化学界の先達のひとり,東北帝国大学理科大学長,同総長を務め,研究第一主義を身をもって示した人である。

isan018_article.png

化学と工業特集記事

heritage018.jpg

(左)小川正孝氏遺族保管の写真乾板
(東北大学史料館蔵)
(右)小川正孝(1865‒1930)
(東北大学史料館蔵)

認定化学遺産 第019号 『女性化学者のさきがけ 黒田チカの天然色素研究関連資料』

黒田チカ(1884 ~ 1968)は,日本の有機化学の黎明期に紫根や紅花などの天然色素構造研究で輝く業績を挙げただけでなく,日本最初の女性理学士で2番目の理学博士であるなど女性化学者のさきがけであった。黒田が教授を務めたお茶の水女子大学と晩年を過ごした福岡市の自宅には研究業績標本,実験ノート,自ら創製した高血圧治療薬「ケルチンC」などが残されている。これらは,黒田が女性化学者として活躍したことを示す貴重な資料であり,化学遺産として認定された。

isan019_article.png

化学と工業特集記事

heritage019.jpg


(左)ムラサキウニ,アカウニ,バフンウ
ニ,パイプウニの実物標本とトゲ色
素スピノクロムの結晶。
(右)理研にて(大正13 年)

認定化学遺産 第020号 『フィッシャー・トロプシュ法による人造石油製造に関わる資料』

戦前・戦中の京都帝国大学におけるフィッシャー・トロプシュ法(FT法)による人造石油の研究及び北海道人造石油株式会社での実用化に関わる資料・試料類が化学遺産に認定された。ドイツで生まれ,我が国で独自の発展を遂げたこのテクノロジーは,戦後再興されることはなかった。しかし,私たちはその歴史に日本技術者集団の格闘の跡とその技術力のポテンシャルの高さを見ることができる。

isan020_article.png

化学と工業特集記事

heritage020.jpg


(左)京都大学でつくられたと触媒(下)の試料
(京都大学化学研究所所蔵)
(右)北海道人造石油株式会社「設立趣意書」
の下書き(昭和13 年6 月)
(滝川市郷土館所蔵)

認定化学遺産 第021号 『国産技術によるアンモニア合成(東工試法)の開発とその企業化に関する資料』

第1次世界大戦後の国際的な経済競争に対処するためには近代的大化学工業を振興させる必要があるとの観点から,政府は1918(大正7 )年に臨時窒素研究所を設立し,高圧法アンモニア合成技術の開発を我が国初の大型プロジェクト方式で行った。ドイツのハーバーの論文や特許を参考にし,苦労の末開発した安くて高活性のアンモニア合成触媒を用いて,1927(昭和2 )年,アンモニア合成に成功した。これは東工試法アンモニア合成技術として世界的に認められている。1931(昭和6 )年,昭和肥料は東工試法アンモニア合成技術を活用してアンモニア及び硫安の企業化に成功した。生産規模は国内最大であった。産業技術総合研究所と昭和電工(株)で保存されている水素製造装置,アンモニア合成触媒,アンモニア合成管,高圧ガス圧縮機等は我が国の近代化学工業創出の原点を物語る貴重な資料である。

isan021_article.png

化学と工業特集記事

heritage021.jpg


(左)アンモニア合成触媒

認定化学遺産 第022号 『日本における塩素酸カリウム電解工業の発祥を示す資料』

日本化学工業(株)の創設者・棚橋寅五郎は独自の技術開発により,1910(明治43)年に御影石でつくった電解槽により塩素酸カリウムの工業化に成功した。これは,我が国最初の電解化学工業であった。その後様々な経緯により,その工場は,現在は昭和電工(株)東長原事業所となっているが,白御影石製電解槽は電極とともに保存され,化学遺産に認定された。また工場創設当初の巨大な製造建屋は今も使われている。化学工業で明治期の巨大な製造建屋が残っているケースは大変にまれであり,これも化学遺産に認定された。

isan022_article.png

化学と工業特集記事

heritage022.jpg

(左)旧塩剥製造建屋北正面入口側
(右)電極付き白御影石製電解槽

関連リンク