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会長談話 - 113番元素の命名権決定を受けて

2015年12月31日

会長談話 - 113番元素の命名権決定を受けて

公益社団法人 日本化学会会長 榊原 定征

 この度、理化学研究所(現九州大学教授)の森田浩介博士1)、2)らによって合成・発見された113番元素に対して、国際純正・応用化学連合IUPACから、その発見の優先権が認められ、命名権が理化学研究所の研究チームに授与されたとの知らせに接し、化学コミュニティを代表して、心からの祝意と敬意を表します。

 日本化学会は元素に関する情報発信に関係する「原子量専門委員会」および「命名法専門委員会」3)を設置しています。「原子量専門委員会」は、IUPACから発信される原子量表などを基に、毎年4月に公式の「原子量表」や「元素の周期表」などの情報を機関誌「化学と工業」やHPを通じて会員に発信しています。また、「命名法専門委員会」では、IUPACが決定・発表した新たな元素名の日本語名を決定し発表する役割を担っています4)

この度は、日本化学会の「命名法専門委員会」において、日本発の初めての元素である113番元素の日本語名を決めることができることを重要な役割と認識し、気を引き締め、その日の到来を待ちたいと思います5)

 今回は、113番元素のほか、115番、117番および118番元素の命名権がロシアおよびアメリカの研究所・研究者に付与されました。これによって、周期表の118番までの元素が全て決定することになり、第7周期までが完成するという記念すべき年となりました。この118個の元素の内でただ一個とは言え、我が国で合成・発見された113番元素が存在することは大変意義深いことです。

 周期表は自然科学の基本データを整理したものとして重要であることは言うまでもないことです。
 周期表は中学から勉強しますが、先生たちへのお願いがあります。118個の元素の内でただ1個ではあっても、113番元素が日本人研究者によって合成・発見された元素であり、研究者たちのたゆまぬ努力の成果であることを強調して、教えていただきたいのです。それによって、子供たちには、未知への挑戦、極限への挑戦が、科学技術全般の進歩と人類の更なる発展のために不可欠であることを学び取ってほしいのです。113番元素は約10年の歳月をかけて、わずかに3原子だけ合成することに成功しました。しかも、その寿命は1000分の1秒ほどしかありません。私たちの生活や、物質科学にはすぐに役に立つというものではありませんが、日本人の発見による113番目の元素が掲載された周期表を手にする子供たちが、誇りと尊敬の念を持ち、自然科学、科学技術の進歩への憧れを持ってくれることに大きな意義があると思います。

 日本化学会は、機会を見つけて、子供たちから大人まで、この度の朗報の意義をしっかりと伝えていきたいと思っております。


参考資料

1) 森田浩介氏の略歴

1984年 九州大学理学研究課物理学専攻博士後期課程満期退学
1991年 理化学研究所サイクロトロン研究室研究員
1993年 理化学研究所サイクロトロン研究室先任研究員
2006年 仁科センター森田超重元素研究室准主任研究員
2013年 九州大学教授、理研仁科センター超重元素研究グループ・ グループディレクターも兼務

2) 森田浩介「理化学研究所において113番新元素の合成と確認に成功」、化学と工業、委員長の招待席、2012, 65 (No. 11), 872.

3) 日本化学会「原子量専門委員会」および「命名法専門委員会」の委員名簿

4) 「命名法専門委員会」からの最近の発表例: 2012年6月22日に、114番元素 flerovium(Fl)および116番元素 livermorium(Lv)の日本語名を、それぞれ、フレロビウム、リバボリウムと決定したと発表した。

5) 吉原賢二「小川正孝のニッポニウム研究について」(化学遺産の第四 回認定)、化学と工業、2013, 66 (No. 7), 538.
「わが国の研究者による元素発見の歴史は100年以上前にさかのぼる1908年、小川正孝によって発見、報告された新元素、43番元素ニッポニウム(Np)は一時期、周期表にも掲載されたが、その後、計算違い等から誤りであることが判明し、我が国発の初めての元素は幻と消えた。最近になって、小川博士が発見した元素は、周期表で一段下の75番元素レニウムに相当することが、吉原賢二東北大名誉教授によって明らかにされた。」


関連リンク

国際純正・応用化学連合(IUPAC)によるプレスリリース

理化学研究所による発表