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【開催報告】化学への招待―講演会「調べる化学」

2017年11月27日

 関東支部化学教育協議会主催の化学への招待―講演会「調べる化学」が11 18 日(土)に東京都江戸川区のタワーホール船堀で行われた。

 まず最初に,小林良夫日本鑑識学会理事・日本大学非常勤講師が「身近で楽しい科学鑑定」と題して,事件現場の遺留痕から真実を明らかにする手法や,大構造物のサイズを科学的に推定する方法などを紹介し,それらを通じて問題意識を持ってものをみることの重要性を説いた。続く坂本稔国立歴史民俗博物館教授の「炭素で調べる考古学」では,炭素14年代測定法の解説の後,付着物の年代測定によって日本を含む東アジアの複数の場所で見つかった土器が世界最古と分かった話が紹介され,歴史認識を変えるほどの化学の力に驚かされた。また,14Cの生成量には時代による揺らぎがあり,他の年代測定法との比較によってこれを補正しないと誤った結論につながる危険性をはらむことのことで,与えられた情報を鵜呑みにするのでなしに先入観なく調べることの大切さがよく分かった。最後に「植物のはたらきをみる」というタイトルで中西友子東京大学食の安全研究センター特任教授の講演があり,じっとしているように見える植物も実はアクティブに活動していることが中性子線や放射性同位元素を用いた観察で判明したという研究成果が,カラフルな画像や動画によって分かりやすく示された。手に入らない放射性元素は作ってでも調べるというアプローチからは,『どうしても見たい・知りたい』という強い好奇心こそが科学研究の原動力だということが再認識された。また,「見えないものがみえるようになったことで,さらに新たな疑問が湧いてくる」ということばも印象に残った。

 120 名の参加者からは,「わかりやすく興味が持てた」「講師の先生方が研究を楽しんでいる様子がよく伝わった」などの好意的な意見が多く寄せられた。なお,本企画は東京都江戸川区の第19回産業ときめきフェアにおけるイベントとして,日本化学会関東支部との連携のもと開催されたものである。

工藤一秋 東京大学生産技術研究所・教授)

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