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玉尾皓平会長からのメッセージ ― 第二期目スタートに当たって、会員の皆さんへのお願い

2013年5月28日

Kohei Tamao
玉尾皓平
日本化学会会長
(独)理化学研究所 研究顧問 グローバル研究クラスタ長

HPニュースでもお知らせしたとおり、5月23日の社員総会と理事会で新たな役員も選出され、会長としての第二期目がスタートしました。退任された理事、監事の方々には学会運営に献身的にご尽力いただきましたことに対して、厚く御礼申し上げます。そして、新たに役員にご就任いただいた皆さん方には、ご留任いただく方々と共に、学会運営にお力添えをお願いする次第です。次期会長(最終候補者)として、榊原定征氏(東レ代表取締役 取締役会長)をお迎えできましたことは、化学会にとって、大きな喜びであります。総合科学技術会議議員をはじめとして、国の科学技術政策を策定してこられた幅広いご経験を化学会の運営に生かしていただけるものと大いに期待しているところです。第二期は、したがって、産学連携体制で取り組むことができる貴重な年なのです。この機会に、できるだけ実行に移していきたいと思っています。微力を尽くす所存ですので、会員各位におかれましても、旧倍のご理解、ご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

さて、24年度、25年度はビッグイベントがない、いわば「平時」であり、化学会のあるべき姿を見直す良い機会ととらえて、会員諸氏のご協力をお願いしてきたところです。 25年度は、I. 組織体制の基盤強化、II. 研究、教育・普及活動の強化、III. 産学官連携の実質化、IV. 存在感・情報発信力向上、の4重点課題のもと、次の15項目の活動方針を掲げております。これらを着実に実行に移していきます。

  1. 公益社団法人として円滑な運営
  2. 会員増強
  3. 支部活動強化に向けた検討
  4. 財務体質の健全化・強化
  5. 事務局の効率化、あり方の追求、人材育成
  6. 論文誌:科研費ベースの戦略の実行
  7. 年会の活性化案の策定
  8. 教育・普及活動の強化に向けた検討
  9. 産学交流活動の実質化
  10. CSJ化学フェスタ定着と持続的な将来戦略構築
  11. 日化協・JACIとの連携強化
  12. 行政・異分野学協会連携と適切な政策提言
  13. 国際化の推進、国際連携の実質化
  14. 広報・情報発信力の強化と広告戦略実行
  15. 東日本大震災被災者支援

いくつか追加説明をしておきます。

2.会員増強:わが国の人口減による影響をもろに受けるのはもう少し先でしょう。事実、統計によると、わが国の研究者人口は今のところは横ばいです。化学分野での研究者人口は、アカデミアは1万人余、化学産業界には3.5万人というデータがあります。産業界の方が3倍以上いらっしゃいますし、産業界ではむしろ研究者人口は増えています。にもかかわらず、化学会会員はここ数年、毎年数%ずつ減少しています。アカデミアからは80%以上が会員になっていますが、産業界からの会員は7千人弱です。3.5万人の20%ですね。これが倍増すれば、化学会全体の活動が大いに活性化されることでしょう。学生会員の皆さんも、企業に就職した後も、正会員として化学会の活動に参画ください。会費一括納入制度が昨年導入され、ベテラン化学者(熟達頭脳)の確保はできつつあります。若手、中堅の会員増が活性化には欠かせません。人と情報がダイナミックに交わる場、化学会をご自身の仕事に活用していただければと願っています。産業界の皆さんにも興味を持っていただけるようなコンテンツを含め、会員としてのメリットを実感してもらえるように化学会の活動を強化します。いや、共に、強化しようではありませんか。

重点課題3、6-14、はすべて、この活動強化策と言えるものばかりです。

春年会の活性化策として、ATP(Advanced Technology Program)の強化による産学連携強化、face-to-faceでの議論の機会を増やすためのポスター発表割合の増強、英語発表推奨と発表会場の統一化による国際化促進、などを実行します。また、産学官の交流深化を目的とした秋季事業「CSJ化学フェスタ」は、産学連携プログラム、学生のポスター発表に加えて、産総研や理研などの関連セクターの参加、科学技術振興機構(JST)プログラムや科研費「新学術領域研究」などの公開シンポジウムの同時開催、など春年会とは異なる多次元のイベントとして定着、活性化させます。プログラムは決まり次第、順次、HPで公開します。ご期待ください。

教育・普及活動を産学官一体となって取り組みます。2011・3・11東日本大震災で大きく傷ついた科学技術への信頼回復は、わが国にとっては極めて大きな課題です。化学の市民権向上と次世代育成に向けて、日本化学工業協会(日化協)、新化学技術推進協会(JACI)や経済産業省、文部科学省と連携して、「『夢・化学-21』の全国統一ブランド化」および「全国一斉オープンキャンパス」などの具体化に取り組んでいます。現在、支部で行っていただいている地元に密着した活動にもすべて、「夢・化学-21」ブランドを付けて実施する準備を整えています。教育・普及活動の強化のために、教育・普及担当副支部長を置き、本部との活動の一体化を図っています。国民からの信頼回復にとって地道な活動は、社会における科学者(化学者)(Scientists for and in society)としての責務です。

論文誌、Bull. Chem. Soc. Jpn. (BCSJ)および Chem. Lett. (CL)の国際ジャールとしてのレベルアップに取り組みます。化学会にとって長年の最大の課題と言っても過言ではありません。日本学術会議の論文誌問題検討委員会での数年にわたる議論を取りまとめた提言を基に、科研費「研究成果公開促進費」に「国際情報発信強化」が新設さました。わが国の学会発リーディングジャーナルを育てるのが主目的です。化学会から申請したBCSJとCLの強化策が幸い採択されました。これから5年間、強化策を実行に移し、5年後には両誌のインパクトファクター(IF:現在は1.5程度)を3以上に引き上げることを目指しています。IF至上主義ではありませんが、世界の現状に鑑みれば、先ずはこれの向上に取り組むのが近道です。ここまで上がれば、国際ジャーナルの仲間入りができます。BCSJの編集長を務めたときの大きな反省点が、出版した論文のセールス体制が構築できなかった、ということなのです。今後は掲載論文のセールスにも力を入れます。両誌の論文情報を分野別にまとめて、冊子体やHPで広くPRしますので、論文作成の参考資料としても活用いただければと願うものです。投稿の勧誘もこれまで以上にお手元に届くことでしょう。ぜひ、良い論文を投稿ください。海外からの投稿促進にも取り組み、真の国際ジャーナル化を目指します。みんなで、国際的に通用するリーディングジャーナルに育てましょう。良くする最初で最後のチャンスなのです。

わが国の論文数が減少しています。欧米や中国は増え続けているのと対照的です。その傾向はすでに指摘はされていましたが、文科省の科学技術政策研究所から昨年8月と12月に発表されたデータは衝撃的でした。今年3月開催の第93春季年会で緊急シンポジウムを開き、現状分析と対策などを議論し、6項目の提言として発信しました。3月27日にHPでも公開しています。また、月刊「化学」6月号にシンポジウムのレポートが掲載されています。ぜひ、研究現場でも議論し、ご意見をお寄せください。文科省などへの政策提言にも生かしていきます。

化学会の活動は、化学会内に閉じたものであってはなりません。産学官連携、国際連携、地域との連携、これらの活動を通してこそ、化学のブランド力が高められます。

化学が率いる持続社会、自信と誇りと希望をもって構築しようではありませんか。その底力は会員の皆さんの中に秘められているのです。ぜひその力を生かしてください。

2013年5月28日