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【開催報告】R&D懇話会188回 生物規範科学~生物の技術体系を解明し手本とする~

2016年9月9日

日本化学会のR&D懇話会188回 定例会が9月2日(金),化学会館(東京都千代田区)で開催された。今回は「生物規範科学~生物の技術体系を解明し手本とする」をテーマに,塩見邦博信州大学准教授と尾崎まみこ神戸大学大学院理学研究科教授が昆虫の機能の発現機構について解説した。産学から18名が参加し,熱心に聴講した。

塩見准教授は「昆虫休眠の分子機構の解明とその制御」と題し講演した。生物は季節の移り変わりを察知し,繁殖に都合のよい季節の到来を予知,種によっては自らのみならず次世代個体の適応度を上げる戦略をとる。この現象の一例が「休眠」である。塩見教授はカイコの母蛾の胚発育期の温度感受性期にイオンチャネルに属する温度センサー分子の活性化が誘起され,これをきっかけに休眠が誘導される過程を解明,この温度センサー分子がカプサイシンなどの天然成分を含むリガンドに応答する性質を利用し卵を人為的に休眠卵へと誘導することに成功している。この結果から,害虫や益虫の休眠を制御するイオンチャネルを同定し,その高感度で天然物由来のリガンド剤を利用することで外環境を模倣し,昆虫の成長・休眠を制御する低コスト・高安全性の病害中防除のための農薬の開発が可能との展望を示した。

尾崎教授は「アリの化学交信に学ぶセンシング技術」と題して講演し,社会性動物であるアリの巣仲間識別に特化したセンサに焦点を当て,多重成分フェロモンの混合パターンの差分検出能を有する嗅覚センサの機能性と,それを支える分子・組織形態学的構成やメンテナンスについて解説した。また未来型匂いセンサ開発に向けて,アリ型センサに学ぶことの有用性を述べた。

参加者からは昆虫の機能の発現機構の詳細について複数の質問があり,関心を寄せていた。講演の後,講演者と参加者が引き続き意見交換した。

2016年度のR&D懇話会は今回が4回目。次回以降は10月「自動運転と人工知能」12月「分析技術」をテーマに開催する予定。
R&D懇話会 189回 人工知能・自動運転が拓く社会

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