日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >環境・安全化学・GSC >水中での触媒的有機反応

水中での触媒的有機反応

 水は,地球上に普遍的に存在する最も一般的な液体であり,環境負荷や安全性の観点からは溶媒として最も適した物質である。しかし,大部分の有機物は水に難溶であるため,有機反応を水中で行うのは通常困難である。
 最近 Cheng, Liu らは,多孔質有機シリカ上に固定化したロジウム触媒を用いることで,芳香族ケトンの不斉水素化が水中で進行することを報告した1)。この固定化触媒は回収が容易であり,触媒活性を損なうことなく再利用が可能である。また,興味深いことに,均一系の触媒と比べて反応性が向上していることが報告されている。
 また,Reiser, Sreedhar らは,鉄・銅の二金属から成るナノ粒子を用いることで,アリールボロン酸のアジド化が水中で進行することを報告した2)。また,反応後にアルキンを添加することで,二置換トリアゾールを容易に合成できる。これらのような水中での効率的な触媒的有機反応はまだまだ限定的であり,さらなる発展が期待される。

chem-67-06-02.jpg

1) T. Cheng, G. Liu et al., Chem. Asian J. 2013, 8, 3108.

2) O. Reiser, B. Sreedhar et al., Eur. J. Org. Chem. 2013, 4674.

魚住泰広・永長 誠 分子科学研究所