日本化学会

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Top Message

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菅 裕明
Hiroaki Suga
2022年度・2023年度 日本化学会 会長

化学トランスフォーメーション(ChemX)を促進する日本化学会

 新型コロナ・パンデミックがほぼ終息を迎え,ようやく通常の生活が戻りつつある。3 年以上にわたるアブノーマルな自粛生活は,我々の生活に多くの変化をもたらしたが,もとに戻るものもあれば,このままニューノーマルとして維持されることもあるだろう。例えば,会議の開催形式が挙げられる。コロナ前は会議といえば対面形式であったが,現在はリモート会議も当たり前のように使われるようになり,シーンに合わせて自在に使い分けることができる。日本化学会も,学術集会,いわゆる春季年会を4 年ぶりに対面でおこなった。まだ,コロナウイルスが5 類感染症になる前に開催されたため,マスクを装着することを推奨した対面集会であったが,アンケートからも80% を超える参加者が対面集会を評価し,来年度の年会も対面参加することを表明している。日本化学会としても,年会を含めた様々な集会において,学生を含めた若いアカデミア会員から産業界に身を置く会員にいたるまで,すべての日本化学会会員にとってより魅力的な集会の場になるよう目指していくことを約束したい。

 一方,日本化学会のミッションのひとつは社会貢献する公益社団法人であり続けることである。人類にとっての長期的な課題は,炭素循環を目指したサスティナブルな社会に貢献し,地球環境に負荷をかけない新しい化学を創造していくことである。この課題は数年ではなく,30 年,あるいはそれ以上に及ぶ長期課題であり,「化学トランスフォーメーション(ChemX)」とも言える。これまで,アカデミアの研究者の創出した成果を産業側の研究者が拾い上げ,使えるものを産業化する,あるいは産業化できるように変えていく,というスキームが一般的であった。しかし,これはスピード感に欠ける。ChemX を強力に加速するには,アカデミアと産業側の化学者が互いに手を組み,対話を深め,長期的な課題に向かって互いの研究の相乗効果を狙うべきである。その触媒となる役割を日本化学会ができればと考えている。

公益社団法人日本化学会 会長
東京大学理学部化学科
菅 裕明