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ポスト「京」コンピュータで開拓する計算化学フロンティア

 2020 年供用開始を目指して,ポスト「京」コンピュータプロジェクトが始まった。実行性能で「京」の100 倍程度,汎用CPU を用いたメニーコア型アーキテクチャになると想定されている。ソフトウェア面では,9 つの重点課題の実施機関が決まり,複数の課題に理論・計算化学の研究者が参加している。プロジェクトの計画に先立ち,「京」を使っているすべての分野の若手研究者が中心になり,今後取り組むべき計算科学課題,それらの解決のために必要な計算機性能をまとめた計算科学ロードマップ作成などの取り組みもなされている。
 筆者は,大規模並列量子化学計算プログラムSMASH1) をオープンソース(Apache 2.0)ライセンスで2014 年9 月にWeb 上で公開した。PC から「京」コンピュータまで対応しており,どの計算機でも高い並列性能,実行性能を示している。シンプルな入力形式とプログラム構造が特徴で,計算実行,プログラム開発両面で使いやすいプログラムになっている。新たな計算手法や機能を追加しやすいだけではなく,一部の計算コードを抜き出して他のプログラムへ移植することも可能であるため,今後の開発コスト削減や計算機科学との連携が期待される。500 原子程度までのナノサイズ系の電子状態計算が容易に行えるようになり,元素戦略プロジェクトと連携し希少元素フリー自動車触媒の開発を目指して,金属酸化物担体への金属微粒子の担持状態とその電子状態,金属微粒子へのCO およびNO 吸着特性などを計算している(図)。ポスト「京」超並列計算時代の基盤プログラムの1 つとして開発と整備,そして応用計算をさらに進めていく予定である。

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1) http://smash-qc.sourceforge.net/

石村和也 分子科学研究所計算分子科学研究拠点 特任研究員