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メタンの脱水素化反応による資源化反応

 メタンは天然ガスの主成分であり埋蔵量豊富な炭素資源である。しかし,CH4のC-H結合は強く,これを活性化して酸素化や多量化してメタノール,エチレンなどの化学工業の基幹原料に変換することは極めて困難である。約30 年前にCH4 酸化カップリング触媒が精力的に研究開発されたが,生成物の逐次酸化が抑えられず触媒開発は停滞した 1)。近年,シェールガスの採掘技術の発展により,再びCH4 を貯蔵,運搬容易な化合物への変換プロセスの開発が切望されている。CH4 の水素を酸素でハードに引き抜くのでなく,ソフトに引き抜き,生成物に転換できる新触媒開発が注目されている。

 Markas らは酸化剤(水素受容体)として硫黄に着目し,1323K の高温でCH4,S,Ar ガス(5:1:95)を流通させCH4の脱水素によるC2H4 転換反応にPdS/ZnO2 触媒が活性であり,触媒活性と金属-硫黄結合の強さに相関があると報告している 2)。転化率16%, C2H4 選択率20% と高くないが発展の可能性を示している。

 Bao らはCH4,N2 ガス(90:10)を流通させ,単純脱水によるCH4,転換反応を検討し,SiO2 担体に孤立したFe 触媒が1363 Kの高温で48% 転化率,C2H4 選択率20%,全炭化水素選択率99% を示すと報告している 3)。単核のFe 活性中心が選択的にCH3 を発生させる特徴的触媒作用を発揮すると述べている。

 筆者らも初歩的結果であるが,CH4 のみを用い,In/SiO2 触媒が1173 K で転化率4%,全炭化水素選択率75% を示すことを見いだしている 4)。In は金属液体として機能しており興味が持たれる。いずれにしても,今後この研究分野の活発化が予想できる。

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1) U. Zavyalova, et al., ChemCatChem. 2011, 3, 1935.

2) T. J. Markas, et al., Nature Chem. 2013, 2, 104.

3) X. Bao, et al., Science 2014, 244, 516.

4) 山中ら,触討A, 1E13(2015,三重大).

山中一郎 東京工業大学