日本化学会

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ジェミニ型界面活性剤によるαゲルの調製

 α ゲルは高粘度でしかも水を大量に保持可能なクリーム様の性状をしており,香粧品をはじめとする各種パーソナルケア商品の礎剤の1 つである。α ゲルに関する学術論文の数は限定的ではあるものの,これまでに報告されてきた知見をまとめると,概ね以下のようになる。

① 界面活性剤,長鎖アルコール,水の三成分混合系で調製される場合が多い。
② 白色で粘度が高い。
③ 長軸方向には二分子膜がラメラ状に配列し,層間に多量の水を吸収できる。
④ 短軸方向には水和結晶状態のアルキル鎖がヘキサゴナル状に配列する。
⑤ 熱力学的には非平衡系であり,分散安定性や粘度が経時的に変化する。

 筆者は,ジェミニ(二鎖二親水基)型の界面活性剤に関する研究を進めてきた経緯から,界面活性剤の化学構造と調製されるα ゲルの構造および性質にどのような相関性が存在するのか興味を持っている。例えば,一鎖一親水基型の場合には界面活性剤:長鎖アルコール=1:3のモル比でα ゲルの融点が最高に達し,過剰のアルコールが分離し始める(つまり,α ゲルが飽和した)のに対し,ジェミニ型の場合には1:2 のモル比で同様な状態に到達した(アルキル鎖1 本あたりに換算) 1)。つまり,少量の長鎖アルコール添加時でも,ジェミニ型によるα ゲルの方が飽和しやすいことが示唆された。

 α ゲルに関する研究は,企業所属者による実用的な取り組みが先行しており,学術レベルでの知見の体系化は途上である。一方,α ゲルをキーワードとした講演会や特集記事も最近,散見されるようになってきており,産学共通のホットトピックスになり得る気運も感じている。今後,α ゲルに関する知見を産学で共有し,分子レベルでの構造解析や形成機構の解明が進むことを期待する。

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1) K. Sakai, et al., Langmuir 2014, 30, 7654.

酒井健一 東京理科大学理工学部工業化学科