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国際的に見た日本の科学の学力

Science achievement of Japanese students in international comparative studies

2016 年11~12 月にTIMSS2015 およびPISA2015 の結果が公表された。いずれも国際的な教育調査で,TIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study)は小4 と中2 を対象としてカリキュラムに沿った理科と算数・数学の到達度の調査を4 年ごとに,PISA(Programme for International Student Assessment)は15歳児(高1)を対象として社会に出て生活するための科学的リテラシー,数学的リテラシー,読解力の調査を3 年ごとに実施している。我が国の国際的な成績(基準年の国際平均を500 点,標準偏差を100 点としたときの得点)と順位は小4 理科が569 点で参加47 ヵ国中3 位,中2 理科が571 点で参加39 ヵ国中2 位,高1 の科学的リテラシーが538 点で参加72ヵ国中2 位(OECD 35 ヵ国中1 位)で,いずれも上位であった。
 TIMSS では,理科問題をさらに知識,応用,推論の問題に分類,PISA では,科学的リテラシーの問題をさらに「現象を科学的に説明する(以下,現象説明と記す)」,「科学的探究を評価して計画する(以下,評価計画)」,「データと証拠を科学的に解釈する(以下,証拠解釈)」の各問題に分類している。我が国のそれぞれの得点と順位は以下のとおりである。

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 国内の学力調査等では知識に関する問題はよいが,考える問題に課題があるとされているが,国際調査では知識に分類される問題より応用や推論に分類される問題の成績の方がよいことがわかる。
 一方,科学の価値に関しては,例えば,中2 で「理科を勉強すると,日常生活に役立つ」に肯定の回答割合は61.8%(国際平均85.2%),高1 で「理科の授業で学んだ多くのことは就職に役立つ」に肯定の割合は52.1%(OECD 平均60.6%)で前回に比べ増えたもののその割合は低い。また,自己肯定感に関しても低く,これらは改善を考えていくべき課題であろう。


1) 国立教育政策研究所,TIMSS2015 理科教育の国際比較2016.
2) 国立教育政策研究所,生きるための知識と技能6,明石書店,2016.

松原静郎 桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部