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水素結合で組み上げた多孔性ヘキサゴナルシートの積層構造

Layered Assemblies of Hydrogen-Bonded Porous Hexagonal Sheet

 π 共役分子を水素結合などの非共有結合によって自己集合させ構築した多孔質構造体(nCOF)は,結合の可逆的な形成・解離によって柔軟で応答性をもつ機能性材料へと展開できる一方,その結合の脆弱性から設計指針の一般化は難しい。これに関して筆者らは,カルボン酸2 量体にみられる凡庸な水素結合であっても,超分子シントンを適切かつ高次に設計して分子を連結させることにより,nCOF の構築が可能であると考えた。具体的には,4,4'-ジカルボキシ-o-ターフェニル基を導入した一連の3 回対称性のπ 共役分子を用いて水素結合性ヘキサゴナルネットワーク(H-HexNet)シートを構築し,それを積層させることによって空孔の形・大きさ・多重度を制御できる多孔性構造体の構築を行った1,2)。HNexNetシートの構造やその積層様式および包接空間の三次元的な形状は,単結晶X 線解析によって明確に同定した。また,H-HexNet シートの重なり方や分子の配座自由度における多様性が,4 種類の結晶多形の発現に関与するとともに3),包接されたゲストを脱離させる際に動的な層間すべり挙動を引き起こすことがわかった2)。このH-HexNet 積層体は,ガスや低分子量の炭化水素に対する吸着材として機能するほか,機能性分子の特異な分子配列を構築するためのプラットフォームとしても用いることができる4)。今後,水素結合で組み上げた多孔性二次元シートを応用した機能性材料の開発が期待される。

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1) I. Hisaki et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 3008.
2) I. Hisaki et al., J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 6617.
3) I. Hisaki et al., Chem. Commun. 2016, 52, 300.
4) I. Hisaki et al., Chem. Commun. 2016, 52, 9781.
久木一朗 大阪大学大学院工学研究科