日本化学会

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計算化学が先導するメタン酸化触媒の開発と触媒設計技術の創成

Computational Chemistry toward the Development of Methane Oxidation Catalysts

 メタンの直接酸化は触媒化学の最困難課題の1 つである1)。筆者は量子化学の立場からこの研究に20 年以上取り組んでおり,現在はJST-CREST「革新的触媒」(上田 渉 総括)の支援を受けている。メタンを常温・常圧で直接酸化するメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)には,活性中心として鉄二核のsMMO と銅二核のpMMO が知られている。それらの活性状態の詳細が不明なため,反応機構は分子レベルでまだ十分にはわかっていない2)。関連する人工系として,鉄や銅を含むゼオライトの研究も盛んである。金属ゼオライトでは単核や二核の金属種が反応活性をもたらすと考えられている3)。細孔径が反応活性に及ぼす効果も顕著である。
 本CREST 研究では,実験研究者との連携を重視しており,小島らとの共同研究で,ラジカル性に富むRuIII-oxyl 錯体の
実験的観測と電子状態解析に成功している4)。この特異な活性種の反応性に関して,計算化学から新しい展開を図りたいと考えている。また,小寺らの銅二核錯体はベンゼンをフェノールに転換する5)
この錯体はメタンの活性化にも有効ではないかと考え,計算をさらに進めている。さらに,インフォマティクスに基づ
く予測・設計の計算化学にも取り組んでおり,新しい触媒設計技術として役立てたい。

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1) Chem. Eng. News 1993, May 31.
2) K. Yoshizawa, Acc. Chem. Res. 2006, 39,375.
3) a)M. H. Mahyuddin, A. Staykov, Y.Shiota, K. Yoshizawa, ACS Catal. 2016, 6,8321; b)M. H. Mahyuddin, A. Staykov, Y.Shiota, M. Miyanishi, K. Yoshizawa, ACSCatal. 2017, 7, 3741.
4) Y. Shimoyama, T. Ishizuka, H. Kotani, Y.Shiota, K. Yoshizawa, K. Mieda, T. Ogura, T. Okajima, S. Nozawa, T. Kojima, Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 14041.
5) T. Tsuji, A. Zaoputra, Y. Hitomi, K. Mieda, T. Ogura, Y. Shiota, K. Yoshizawa, H.Sato, M. Kodera, Angew. Chem. Int. Ed.2017, 56, 7779.

吉澤一成 九州大学先導物質化学研究所