日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >コロイド・界面化学 >磁性ナノ粒子のクラスター形成

磁性ナノ粒子のクラスター形成

Clusters of the Magnetic Nanoparticle

 総合化学メーカーにおける商品開発には,コロイド,界面活性剤,高分子,溶媒などからなる形成される商品がある。このような材料フォーシュミレーションは,溶解,分散,凝集,相平衡,相分離1)といった材料の特性を,塗布・乾・反応といった非平衡系で理解し,商品を設計しなくてはならない。
 磁性ナノ粒子のクラスター形成において,エマルションを構造形成の場として,新たな機能性マテリアルアルの創出を試みた。疎水界面を持つ磁性ナノ粒子を用いて,ヘキサンを溶媒とし,そこにSOW タイプのエマルションを形成する2)。磁性ナノ粒子の粒径を均一にすることで,液中乾燥法により,コロイドクリスタルを形成させることができる。液中乾燥法の有機溶媒の除去速度により,構造体がコロイドクリスタルタイプ(図A),アモルファスタイプ,トロイダルタイプ(図B)と興味深い構造を二次凝集体粒子として形成される。さらに,磁性ナノ粒子,高分子,溶媒の相互作用により,更なる興味深い構造形成がなされる。この系には,磁性ナノ粒子,直鎖状ポリスチレンに良溶媒なクロロホルムを用いることにより,その量比にから,ポリスチレンコアを磁性粒子が単層(図C)/多層コートした複合体を形成することができる。一方,クロロホルムとヘキサンの混合溶媒を有機層にしたSOW エマルションにおける液中乾燥おいては,ポリスチレンコア粒子の半面だけを磁性ナノ粒子が覆うJanus 型構造を有するクラスターを形成する(図D)。その他,磁性粒子自身の表面修飾によるJanus 型粒子のクラスター形成に関して研究を行っている3)

chem71-02-02.jpg


1) a)T. Isojima et al., J. Chem. Phys. 1999, 111, 9839; b)T. Isojima et al., J. Chem. Phys. 2000, 113, 3916.
2) T. Isojima et al., Langmuir 2009, 25, 8292.
3) T. Isojima et al., ACS NANO 2008, 2, 1799.

五十島健史 三菱ケミカル株式会社