日本化学会

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界面活性剤のゲル化と金ナノ粒子合成

Synthesis of Gold Nanoparticles in Surfactant Gel

 金ナノ粒子には,球状,板状等の様々な形状のものがあり,応用が期待されるものの1 つに棒状の金ナノロッドがある。金ナノロッドの長さは,おおよそ数十nm~数μmであり,形状を特徴づけるパラメータであるアスペクト比(=長軸/短軸)に依存する波長の光を吸収する(局所表面プラズモン吸収)。アスペクト比が約10 以下の場合は,可視~近赤外の光を吸収するため温熱療法素子としての利用も期待されている。一方で,アスペクト比が大きな金ナノロッドは,電子配線や光学素子としての応用が期待されている。
 金ナノロッドは,界面活性剤中で金イオンを還元することで合成される。大きく分けて,電気的還元を行う方法,光還元を行う方法,還元剤で還元する方法(シード法)の3 つの方法がある。現在主流となっているシード法は2000 年代初頭に開発され 1),その後シード法を用いた粒径制御の報告が数多くなされたが,高アスペクト比をもつ金ナノロッドを高収率で合成する手法はなかった。
 筆者らは2009 年に,成長溶液中の界面活性剤のゲル化を利用して,1μm を超える金ナノロッドを90% 以上の高収率で合成することに成功した2)。さらに筆者らは,ゲル化法における成長メカニズムや,形状決定のメカニズムも明らかにしてきた。最近では,ゲル化法を用いて,双晶構造をとる高アスペクト比金ナノロッドの合成にも成功している。
 金ナノ粒子は世界的にも注目されており,貴金属ナノ粒子を対象とした著名な国際会議も開催されている。今後,金ナノロッドの更なる応用化・実用化や,ゲル化を用いた簡便なナノロッド合成法が発展していくことを期待する。

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1) N. R. Jana et al., J. Phys. Chem. B 2001,105, 4065.
2) Y. Takenaka et al., Chem. Phys. Lett. 2009, 467, 327.

武仲能子 産業技術総合研究所