日本化学会

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プラズモン-導波路モード強結合

Strong Coupling between Plasmon and Waveguide Modes

局在表面プラズモン共鳴を示す金属のナノ構造体は,太陽電池や人工光合成などの光︲エネルギー変換系における光アンテナとして注目されている1)。ここでは,プラズモンと導波路モードの強結合による光応答波長の広帯域化に関するト
ピックスを紹介する。
 単一のプラズモン共鳴バンドを有する金属のナノ構造体に複数のナノ構造体を隣接させると,近接場相互作用により共鳴スペクトルが2つのピークに分裂する。構造間においてコヒーレントなエネルギーのやり取りが起これば強結合状態が誘起され,ハイブリッド準位の形成に基づいてスペクトルが分裂し 2),コヒーレントなエネルギーのやり取りが起こらなければ単なるモード間の干渉によりスペクトルに凹みが生じるためピークが分裂したように見える3)。これらは,近接場スペクトルを測定すれば区別できる4)
 一方,プラズモンは他の光学のモードである導波路モードとも強結合を示し,共鳴スペクトルの分裂が観測される。250nm 厚の酸化チタン光電極上に任意の周期の金ナノグレーティング構造を配置すると,その回折光により酸化チタンに導波路モードが誘起され,金ナノ構造の局在プラズモンモードと強結合する。特筆すべきは,本光電極を用いて光電変換に関する内部量子収率の照射波長依存性を測定したところ,プラズモンの近接場スペクトルと一致したことである4)。これはスペクトルの分裂による光電変換の広帯域化が実現されただけではなく,プラズモン誘起電荷分離機構に近接場増強が関わっていることを示唆しており,詳細な機構解明が期待される。

chem71-06-01.jpg強結合による光応答波長広帯域化の概念図

1) K. Ueno, T. Oshikiri, H. Misawa et al., Chem. Rev. DOI: 10.1021/acs.chemrev. 7b00235.
2) H. Yu et al., ACS Nano 2016, 10, 10373.
3) H. Yu et al., Opt. Express 2017, 25, 6883.
4) J. Guo, K. Ueno, H. Misawa et al., J. Phys. Chem. C 2017, 121, 21627.

上野貢生 北海道大学電子科学研究所