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溶液構造解析が切り開く生体コロイド研究の新展開

Structural Analysis in Solution ―Innovation for Development in Bio-colloid Research―

 溶液中に存在する"コロイド"次元の大きさを持つ両親媒性分子集合体。
 例えば,化学的な視点からは界面活性剤,高分子等が挙げられ,各種条件により溶液中で特異的な分子集合状態を形成,対象界面の状態を制御することが可能なことから,トイレタリー・香粧品・食品など多岐にわたる分野へ応用が期待される1, 2)。一方,生物学的な視点からは,機能性タンパク質,細胞膜,細胞粒子等が挙げられ,これらは生体現象に密接な関連があり,バイオ医薬品,細胞粒子等の医学研究への応用が期待される3)
 これまで,多様な界面科学的手法を用い,コロイド次元の集合体の状態解析が多く検討されてきたが,その評価には各手法に適したサンプル調製が基本的に必要であった。近年の分析装置・解析技術の著しい進歩に伴い,実使用形態に則した濃度・温度範囲での分子会合・界面状態を,直接的に溶液中の構造を解析可能な手法が注目されている。特に,生体中に存在するコロイド次元の大きさを持つ対象物の溶液構造状態解析としては,熱力学法/散乱法/分光法/顕微鏡法等を網羅的に駆使し,補完し合うことで,より明確な溶液中での構造特定が可能となり,実機能との相関性が評価され始めている。今後,当該分野の技術革新になることを期待したい。
 最後に宣伝となって恐縮だが,2019 年11月に開催されるOkinawa Colloids 2019において,"最先端構造解析が切り開く生体コロイド研究の新展開"と題し,一般シンポジウムを開催,生命現象の解明に繋がるコロイド次元の直接的な構造評価法について当該分野のオピニオンリーダーに講演いただく予定であり,当該分野の技術深化へ向けたディスカッションの場となれば幸いである。


1) T. Sato, T. Ogura et al., J. Phys. Chem. B 2016, 120, 5444.
2) T. Ogura et al., J. Phys. Chem. C 2008, 112, 12184.
3) 小倉 卓,溶液構造解析が切り開く創薬研究の新展開,JASIS,2017

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