植物ホルモン共受容体COI1-JAZ サブタイプ選択的リガンドの開発
Development of Subtype-selective Ligand of COI1-JAZ Co-receptor
植物の生理現象を司る植物ホルモンの受容体はタンパク質間相互作用（PPI）型共受容体であることが多く，機能重複する複数のサブタイプが同時に発現していることもあり，解析が難しい。例えばジャスモン酸イソロイシン（JA-Ile）は，植物の生長や防御応答などを制御する植物ホルモンであり，F-box タンパク質COI1と転写リプレッサーJAZ のPPI を誘起する。シロイヌナズナにJAZ は13 種サブタイプがコードされ，遺伝的重複性から各サブタイプの機能は未解明の部分が多い。
筆者らはこの複雑なシグナル伝達機構を解析するケミカルツール開発を目指し，COI1 結合ドメインを蛍光修飾したJAZ 断片ペプチドを用意し，リガンドのPPI 誘導能をすべてのサブタイプで評価できる共免疫沈降法を構築した。これを元にして，JA-Ile の構造ミミックで，ほぼすべてのサブタイプと強く結合する天然物コロナチン（COR）をリードに据え，COI1-JAZ9 および10 選択的なNOPh を見いだした。この分子は，植物の生長には影響を与えず病原菌耐性を高めることができ，この耐病害活性にJAZ9 が主要な役割を果たすことを明らかにした1）。このリガンド評価法は蛍光異方性によるスクリーニング系にも拡張でき2），これ らの展開から植物ホルモン共受容体サブタイプ選択的リガンドが複数開発されれば，複雑な植物ホルモン活性の全容解明につながることなどが期待される。
1） Y. Takaoka et al., Nat. Commun. 2018, 9, 3654.
2） Y. Takaoka et al., J. Biol. Chem. 2019, 294, 5074.
高岡洋輔 東北大学大学院理学研究科・JST さきがけ