日本化学会

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元素記号の手書きはどうするべきか

How to Handwrite Element Symbols

「化学と教育」誌71巻12月号の論壇に「元素記号を手書きでどう描くか」1)が掲載された。
元素記号を手書きする場合,筆者が前任校で使っていた中学の教科書には,1文字目は活字体の大文字,2文字目は活字体または筆記体の小文字,と記載されていた。その出版社のものは現行版でも同じ記載であるが,英語では筆記体を教えないためか,ほかの中学教科書には,2文字目の書体について記載がないものや,「2文字目の小文字も活字体で」と書かれているものもあった。教員には,「それでも2文字目は筆記体を用いるように」と指導する者から,「筆記体は英語で教えないから使わせるべきではない」や「IUPACでも「活字体で」となっているから2文字目が筆記体の答案は×にすべきである」と主張する者まで様々で,現場が混乱しているという話を聞いた。
そこで,化学用語検討小委員会でこの問題を取り上げ,IUPACの刊行物や国際バカロレアの高等学校版などを広く調べた結果を基に,望ましい考え方をまとめたのがこの報告1)である。
要するに,IUPACの刊行物に記載があるのは印刷物に対する指針だけで,手書きについては何も触れていない,記載の原文に"in upright type"とあり「活字体で」と訳されているが,"type"という単語は,「どんなタイプの人が好きですか?」などと言うときの意味ではなく,「タイプライター」や「タイピスト」に使われている「活字」の意味なので,「立体の活字で」と訳すべきであることがわかった。国際バカロレアの高等学校版も同様で,手書きに関する記載はない。したがって,手書きにあたって,「活字体で描く」「筆記体は避ける」などと制限をする根拠はないことが確かめられた。
それを踏まえて,では手書きの場合はどうするべきかについて,教員の手書き,学習者への指導,定期試験など,に分けて筆者らの考え方が述べられている。
現場で参考にしていただけると幸いである。

1) 伊藤眞人,荻野 博,有賀哲也,歌川晶子,下井 守,渡部智博,化学と教育 202371, 552.

歌川晶子 元 多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校