日本化学会

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人工核酸を利用した蛍光バーコードの開発

Development of Fluorescent Barcodes by Artificial Nucleic Acids

有機色素を利用した蛍光イメージングは特にバイオテクノロジーにおいて必要不可欠な技術である。しかしながら,有機色素は励起・蛍光波長にオーバーラップがあるため,通常4色程度しか同時に利用できないという大きな問題点があった。この問題点を解決するため,近年スペクトルイメージングやラマンイメージング等が報告されている1, 2)
それに対し,筆者らは核酸の鎖交換反応を利用することで蛍光色が"配列"に従って変化する蛍光バーコード(CCFB)を開発した3)。蛍光色をあらかじめ決められた順番で変化させることができれば,限られた種類の蛍光色素で膨大な数の蛍光ラベルを調製することができる。実際,筆者らは人工核酸であるトレオニノール核酸4)を利用し,3種類の蛍光色素を2回蛍光変化させることで33=27種類の蛍光バーコードを調製した。また,これを利用することで,多種類のビーズの同時識別が可能であることを明らかにした。さらに,抗体にラベル化することで,タンパク質イメージングへの展開が可能であることも実証している。この手法は,蛍光変化回数を増加させることで指数関数的にラベルの種類を増加させることが可能である。また,多種類のラベルを調製する際に必要となる核酸鎖の種類が非常に少ないという利点もある。そのため,生体分子の網羅的イメージング等への展開が期待できる。

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1) L. Wei et al., Nature 2017, 544, 465.
2) A. M. Valm et al., Nature 2017, 546, 162.
3) K. Makino et al., J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 1572.
4) H. Asanuma et al., J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 14702.

樫田 啓 名古屋大学大学院工学研究科