日本化学会

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相分離を用いたセラミックス多面体粒子の多孔質化

Pore Formation in Ceramic Polyhedral Particles by Phase Separation

電極材料や吸着剤,触媒など様々な機能性材料において,比表面積を増大させることが性能の向上につながることから,大きな比表面積を有するナノ粒子の開発が盛んに行われている。しかし,ナノ粒子は容易に凝集し,特に高温では粒子成長により比表面積が著しく低下するため,耐久性に課題がある。加えて,ナノ粒子は細胞膜を透過しやすく,生物に対して毒性を示すことが明らかとなってきており,地球環境に重大な悪影響を及ぼす危険性が示唆されている。そこで,比較的大きなマイクロメートルサイズの粒子を多孔質化することにより,大きな比表面積をもちながら環境負荷の小さい材料の開発が求められている。
筆者らは,液相プロセスにより,粒子サイズ・形態を制御して多面体形状を有する単結晶粒子を作製し,それらを前駆体として多孔質セラミックス多面体粒子を得る手法を開発した1, 2)。水酸化物など,熱処理により熱分解を伴って結晶相転移し,かつ2種類の結晶相へ相分離する化合物を前駆体として選択し,熱処理後に副相を選択除去することで,粒子内に3次元貫通孔を導入できることが確認された。作製過程で熱処理を経ているため,得られた多孔質粒子は比較的高い熱安定性を示すことから,400~500℃程度の温度域で使用することが可能であり,アンモニア合成や排ガス浄化といった触媒分野における応用が期待される。

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1) G. Hasegawa, K. Hayashi et al., Chem. Mater. 2018, 30, 4498.
2) G. Hasegawa et al., Chem. Mater. 2023, 35, 6423.

長谷川丈二 名古屋大学未来材料・システム研究所