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極細金ナノワイヤーの精密合成とその光学特性

 金ナノ構造体は,その大きさや形状に応じて多彩な色彩を示すことが知られている1)。球形金ナノ粒子は,粒径が2 nmを超えると局在表面プラズモン共鳴によって赤色を呈するが,それ以下の粒径では離散化された電子準位間の遷移が支配的となり茶色を基調とする色合いに変化する1)
 一方,ロッド形状では長軸と短軸方向の2 つのプラズモン共鳴吸収ピークが観測され,そのアスペクト比に応じて青や緑などの色調を示す。もしナノロッドの直径を2 nm 以下まで微細化すると,どのような光学特性を示すだろうか。最近筆者らは,直径が1.6 nm の高純度極細金ワイヤーを,長さ20 nm~サブmm の範囲で制御することに成功した(図A)2)。極細ワイヤーでは,2~ 20mmの領域に強い吸収ピークが1 つ観測された(図B)。ピーク位置と長さの関係,ピーク強度の偏光依存性から,このピークを長軸方向のプラズモン共鳴に帰属した。
 さらに最近,筆者らはチオール存在下で金イオンをゆっくり還元することで,極細金ナノロッドを得た3)。粉末X 線回折パターンの解析から,5 つの立方八面体Au13 が(100)面を共有して連結したAu49(図C)をコアの構造として提案した。この極細金ナノロッドは,1340 nm に強い吸収(3×105 M-1cm-1)を示した(図D)。この吸収ピークの起源については,今後のさらなる研究が待たれる。

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1) Y. Negishi et al., J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1206.

2) R. Takahata et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 8489.

3) S. Takano et al., J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 7027.

高野慎二郎・佃 達哉 東京大学大学院理学系研究科化学専攻