日本化学会

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Top Message

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菅 裕明
Hiroaki Suga
2022年度・2023年度 日本化学会 会長

 この2年間,人類はコロナパンデミックに翻弄された。残念ながらまだ終息とは言えないまでも,徐々にその出口は見えてきている。一方で,このパンデミックは我々人類の英知を知る機会にもなった。コロナワクチンの迅速な開発はもちろんのこと,わずか2年で経口薬まで患者に提供されるようになったことは驚くべきことだ。これらには生物学の基礎研究や技術力だけでなく,化学の技術も大きな寄与をしており,ロジスティクスを含めた「総合的な人類の知(総合知)」によって切り抜けてこれたことに間違いない。一方,我々人類にはもっと長期的に深刻な課題,すなわち地球環境を守りつつ,炭素資源を循環できる持続可能な社会の構築を導く必要がある。

 「カーボンニュートラルな社会の構築」「炭素循環型社会の構築」には,まさしく総合知が必須であることは自明ではあるが,化学はその中心をなすべき存在だ。それは,化石資源をもとに生産されたエネルギーや化学製品の消費が人類の生活上の快適さと経済的な豊かさを人類にもたらしたがゆえに,これからは化学が持続可能な社会の実現に向けた新技術を開発していく役割を果たすべきであり,また逆に化学だからこそ実現できることでもある。そのためには,アカデミアと産業界の協業は不可欠であろう。また,それはSDGs に関わるいかなる研究分野の化学にも同様のことが言える。

 日本化学会は,そういった将来の化学者を育成支援する場であり,アカデミアと産業界の交流の場でもある。これまでもその役割を果たしてきたが,日本政府や経団連が進める「スタートアップエコシステムの構築」「スタートアップ躍進ビジョン」を念頭に,化学に直接的,間接的に関わるスタートアップ企業を含めた産学協業のサポートも必要であろう。日本化学会は,公益社団法人として持続可能な社会の構築に寄与する学会であり続けるべく,努力を続けたいと考える。

公益社団法人日本化学会 会長
東京大学理学部化学科
菅 裕明