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情報化学による測定困難な対象を推定するソフトセンサー技術

 化学・産業プラントにおいて測定が困難な製品品質を予測するためソフトセンサー技術が活用されている。ソフトセンサーとは,効率的かつ安定的な変数Xと製品品質y との間で構築された数値モデルである。新しく測定されたX の値をモデルに入力することでリアルタイムにy の値を推定できる。
 フェノール製造プロセスでフェノール濃度測定をしようとすると,図のように数時間おきにしか測定できない上に1 回の測定にも時間がかかる。しかしながらソフトセンサー技術を活用すると,その濃度をリアルタイムに高精度で予測することが可能となる1)。また膜分離活性汚泥法での,膜の汚れによる詰まりや堆積というファウリングがどのように進行するかも精度良く予測できる2)
 さらに現在,錠剤製造などの製薬プロセスにおいてもソフトセンサーが活用されつつある。錠剤製造では,原料のばらつきや製造設備の変動等の外乱がある中で,医薬品としての品質を満たす錠剤を効率かつ安定的に製造しなければならない。そのためのリアルタイム監視技術として,非破壊で迅速な分析が可能な近赤外分光法(NIR)が注目されている。NIR スペクトルと医薬品中の有効成分の含有量との間でソフトセンサーを構築する。そして,NIR スペクトルから有効成分含有量を推定し,制御を行うことで品質を管理することが可能となる3)。このようなソフトセンサー技術が活用されることで,様々な分野でより効率的で安定なプロセス管理の構築が期待される。

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ソフトセンサーによるフェノール濃度の予測例1)

1) H. Kaneko, K. Funatsu, Ind. Eng. Chem. Res. 2015, 54, 700.

2) H. Oishi, H. Kaneko, K. Funatsu, J. Membr. Sci. 2015, 494, 86.

3) H. Kaneko, K. Muteki, K. Funatsu, Chemom. Intell. Lab. Syst. 2015, 147, 176.

金子弘昌 東京大学大学院工学系研究科