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分子の自己組織化に基づくフォトン・アップコンバージョン

 三重項-三重項消滅(TTA)に基づくフォトン・アップコンバージョン(TTAUC)は, 低エネルギー光を高エネルギー光に変換しうる方法論であり,これまで特定領域の光しか利用できていない光触媒や太陽電池などの効率を高める可能性があることから期待されている1)。TTA 機構に基づくUC は,(1)三重項増感剤(ドナー)からアクセプターへの三重項-三重項エネルギー移動,(2)三重項励起状態にある2 分子のアクセプターが拡散・衝突して起こるTTA と,その結果生じる高い励起一重項状態からのUC 発光の2 つのプロセスからなる。従来,溶液やアモルファス高分子膜中における励起分子の拡散・衝突に基づくTTA-UC が研究されてきたが,溶存酸素による励起三重項状態の失活や,高分子マトリックス中においては励起分子が拡散しにくい(高い励起光強度が必要となる)など,多くの未解決課題があった。一方,最近,アクセプター分子を自己組織化させることにより,三重項励起エネルギーのマイグレーションに基づくTTA-UCが実現された1)。p電子系液体2),イオン液体3)などの非揮発性液体から超分子ゲル4), 分子膜5), 分子性結晶6),MOF7)などの多岐にわたる分子組織系において,溶存酸素の影響を受けず,また太陽光レベルの低い励起光強度においても作動するなど,分子組織系TTAUCならではの卓越した特徴が次々と見いだされ,注目を集めている。

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1) 楊井伸浩, 君塚信夫, 高分子, 2015, 64, 439.

2) P. Duan et al., J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 19056.

3) S. Hisamitsu et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2015, DOI: 10.1002/anie.201505168.

4) P. Duan et al., J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1887.

5) T. Ogawa et al., Sci. Rep. 2015, 5, 10882.

6) P. Duan et al, Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 7544.

7) P. Mahato et al., Nat. Mater. 2015, 14, 924.

楊井伸浩・君塚信夫 九州大学工学研究院応用化学部門