自然界の生体高分子にならい,モノマー配列が精密に制御されたポリマーの合成が注目され,種々の手法が検討されている2)。1 分子ずつつなげる手法は最も確実だが,つなげるたびに単離・精製の必要がある。また最近,あらかじめモノマー配列を組み込んだ化合物の重合による手法3)が数例報告された。一方,最も単純な手法は直接共重合だが,各モノマー由来の生長種が特定のモノマーと選択的に反応する必要があり非常に難しい。ABC 型交互三元共重合体の合成でさえ,モノマーの1 つを大過剰に用いて選択性を付与した2 例4, 5)に限られる。
筆者らは,最近開発したビニルエーテル(A)とオキシラン(B)のビニル付加・開環同時カチオン共重合系に第三成分としてケトン(C)を加えた系を設計し,選択的な交差生長反応を伴う三元共重合6)を実現した。この重合では,"じゃんけん" での勝ち負けのように,A → B,B → C,C → A の方向でのみそれぞれ反応し,その逆方向の反応は進行しないため,構成繰返し単位の連鎖順が制御された三元共重合体が生成する。現時点では,各A-B-C 単位の構成は約2 個-約2個- 1 個であるが,各単独生長反応の厳密な抑制("あいこ" 禁止)を実現することで,理想的なABC 型交互三元共重合を目指している。本系は生長カチオン種の性質に基づいた高選択的な重合反応の例であるが,今後,配列制御ポリマー合成のみならず,低分子の有機化学反応への波及も期待される。
1) 命名は阪大院理・橋爪章仁教授による。
2) J.-F. Lutz et al.,<1> Science 2013, 341, 1238149.
3) K. Satoh et al., Nat. Commun. 2010, 1, 6.
4) H. L. Hsieh, J. Macromol. Sci., Chem. 1973, A7, 1525.
5) T. Saegusa et al., Macromolecules 1977, 10, 68.
6) A. Kanazawa, S. Aoshima, ACS Macro Lett. 2015, 4, 783.
金澤有紘・青島貞人 大阪大学大学院理学研究科