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分子ライブラリとの非選択的な相互作用を利用するタンパク質検出・細胞診断 

選択的な相互作用を示さない分子群(分子ライブラリ)を混合した際に得られる応答パターンを,あらかじめ採取しておいたパターンデータと照らし合わせることで被検体を識別する分析法を交差反応型センサと呼ぶ。
 同センサを構築する上で重要となるのが分子ライブラリの多様性である。Tomita らは酵素がもつ天然の多様性に着目し,複数種のアニオン性酵素に一種類のカチオン性合成高分子を反応させて酵素/高分子複合体(PIC)の分子ライブラリを構築した1)。複合体形成時にPICの酵素活性は一時的に低下しているが,血漿タンパク質を添加すると様々な強さの相互作用が発生し,各タンパク質独特の酵素活性回復パターンが獲得できる。Tomita らはPICライブラリの多様性をさらに拡張することに成功し,異種アルブミン2)や細胞分泌液3)の識別にも同センサが有効であることを示した。特筆すべきは,細胞分泌液を分析することでがん細胞の種類,さらに幹細胞の未分化/分化状態の判別を非破壊的に実践した点にある。マーカ分子が同定されていない希少な細胞サンプルを,染色せずに非侵襲な手法で評価しなくてはならない場合,Tomita らが提案する細胞分泌液を被検体とする交差反応型センサシステムは大きな威力を発揮するだろう。

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1) S. Tomita, et al., Chem. Commun. 2013,49, 10430.
2) S. Tomita, et al., Analyst 2014, 139, 6100.
3) S. Tomita, et al., Chem. Sci. 2015, 6, 5831.

吉本敬太郎 東京大学教養学部統合自然科学科