日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >有機結晶 >高機能な多孔質有機塩(Porous Organic Salts : POSs)の構築

高機能な多孔質有機塩(Porous Organic Salts : POSs)の構築

Construction of Versatile Porous Organic Salts(POSs)

 有機低分子からなる非共有結合性の多孔質構造は,成型加工性や構造多様性などに優れることからこれまでにも盛んに研究が行われている。しかし一方で構築された多孔質構造の安定性や機能化,設計手法の汎用性の面で多くの課題が残されている。
 このような問題に対し,筆者らは多様なスルホン酸とトリフェニルメチルアミン(TPMA)から形成される嵩高い超分子クラスターに着目し,これを基本単位として多孔質構造の階層的な構造設計を行ってきた(図上段)1)。十分な長さを持った多環式芳香族骨格にスルホ基を導入しTPMAと組み合わせることで,芳香族部位が四面体方向に突き出した超分子クラスターを形成させることができる。この突き出した芳香族部位を連結することで,ダイヤモンドネットワークや籠目ネットワークを経由して,様々な大きさ(直径5~30Å)や形状(円形,三角形,四角形等)の空孔を持つ多孔質構造が構築された(図中段)2)
 さらにこのような多孔質有機塩の物性や機能は,導入する芳香族骨格の影響を大きく受け,発光特性や電気特性を簡便に付与することができる。芳香族骨格を設計することで発光可変な多孔質材料を構築し,取り込んだ化学物質に応じて発光色を青色から赤橙色まで大きく変調することができた(図下段)3)。このように多孔質有機塩は,従来からの物質吸着特性と外部刺激応答的な光電子機能を融合することで,今後センシングやイメージングなどの新しい機能性材料への展開が期待される。

chem-69-11-02.jpgのサムネイル画像


1) N. Tohnai et al., Cryst. Growth Des. 2012, 12, 4600.
2) N. Tohnai et al., Chem. -Eur. J. 2016, 22, 15430.
3) N. Tohnai et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2012, 51, 155.

藤内謙光 大阪大学大学院工学研究科