近年,脚光を浴びている体液中のがん診断マーカーとして,血中循環腫瘍細胞,血中腫瘍DNA,エクソソームなどが挙げられる。エクソソームは50~150nm のエンドリソソーム経路で細胞外に放出されるベシクルである。その表面や内部には様々なタンパク,mRNA,DNA,miRNA などを含んでおり,細胞間コミュニケーションツールとしてがんの進行や転移に深く関与することが示唆されている。通常その単離には,超遠心分離が用いられるが,ほかのベシクルやタンパク凝集体との完全な分離は難しい。また,ソーティング機能を備えたフローサイトメーターを用いても,サイズが小さすぎて単離が困難である。そこで近年,エクソソーム表面に固有なマーカータンパク(CD63,CD9,CD81)や,その他のマーカータンパクを利用したいくつかの画期的な単離・検出法が開発されてきている。Im らは,等間隔にナノメートルサイズの孔が配列した金薄膜上にこれらマーカーに対する抗体を固定化し,透過型表面プラズモン共鳴によるラベルフリー,ハイスループットなエクソソーム検出システムを開発した(図)。これを用い,卵巣がん患者の腹水から卵巣がん細胞由来のエクソソームを検出することに成功している1)。また,Zhaoら2),Jeongら3)は,抗体固定化磁気微粒子上にエクソソームを捕捉,濃縮することで高感度化を,そしてマイクロ流体デバイスやポータブル電気化学検出器と組み合わ
せることでシステムの小型化,低コスト化を達成している。エクソソーム内miRNA 等の他のマーカーの情報も同時に捉えることができれば,将来,優れた非侵襲的ながん診断法となるであろう。
1) H. Im et al., Nat. Biotechnol. 2014, 32, 490.
2) Z. Zhao et al., Lab Chip 2016, 16, 489.
3) S. Jeong et al., ACS Nano 2016, 10, 1802.
北村裕介 熊本大学大学院先端科学研究部