日本化学会

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ソフトテンプレート材料合成

Soft-template Method for Materials Synthesis

材料の機能の発現には,化学組成だけでなく,その形状や大きさが密接に関わっている。ナノ粒子,ナノロッド,ナノシートなどのナノ材料や,ナノ,メソ,マクロの空孔を有する多孔質材料は,大きな比表面積や異方性のため,バルク材料とは異なる性質を示す。
 近年,自己組織会合構造を鋳型として材料の規則的微細構造を作り出すボトムアップ的な手法が注目されている。微粒子やゼオライト等の固体を鋳型とした手法(ハードテンプレート法)と,ミセルやエマルション,リポソーム,ポリマーブレンド,液晶等のソフトマターの相分離構造等を鋳型とする手法(ソフトテンプレート法)がある 1)
 ソフトテンプレート法を用いると,ミセルからナノ粒子が,二分子膜からナノシートが,それぞれ得られる(図)。特に,二分子膜が密に詰まったラメラ相を利用したナノシート合成において,合成後にナノシートの塗布を行うためには,ナノシートを再分散させる必要がある。最近,筆者らは,超膨潤ラメラ相を鋳型として用いることで,1 nm 程度の厚みのナノシートの希薄分散液が一段階の工程で合成できることを報告した 2)
 一方,ミセルやエマルションが整列した構造を鋳型にすると,モノリシックな規則性多孔体が得られる 1, 3)。最近,筆者らは,100 μm 以上の単分散エマルションを用いることで,高分子多孔フィルムが作製できることを報告した 4)
 今後も,種々の用途に合わせた微細構造形成に,ソフトテンプレート法が威力を発揮していくものと予想される。

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1) S. Tanaka et al.,「 ナノ空間材料ハンドブック」有賀克彦監修,第1 章 メソ多孔体類,12 節 有機鋳型法によるメソポーラスカーボンの合成,エヌ・ティー・エス,2016
2) Y. Uchida et al., J. Am. Chem. Soc. 2016,138, 1103.
3) H. Yabu et al., Langmuir 2005, 21, 1709.
4) Y. Iwai et al., Macromol. Rapid Commun. 2017, 38, 1600502

内田幸明 大阪大学大学院基礎工学研究科