日本化学会

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破骨細胞活性イメージング

Osteoclast in vivo Imaging

破骨細胞は,活性化時に酵素やプロトンを放出し,骨組織の破壊を行う。本研究では,この酸性領域を蛍光プローブにより選択的に可視化することで,活性化破骨細胞を検出可能であると考えた。すなわち,活性化破骨細胞がpH感受性蛍光プローブの吸着した骨表面で酸性領域を形成すれば,活性化破骨細胞の細胞基底面から蛍光が観察されるはずである。そして,破骨細胞自身を蛍光タンパク質によってラベル化することで,破骨細胞の局在変化に伴うpH変動,つまり活性変化をリアルタイムに検出することを可能とした。具体的には,酸性条件下で蛍光ONとなるスイッチ機能を持った低分子プローブを,骨表面上に送達することによって,生体内破骨細胞活性を検出可能とした。そこで,骨組織に対して高いアフィニティーを有するビスホスホネート基に着目し,ビスホスホネート基による能動輸送能を有する光安定性の高いpH感受性プローブをデザイン・合成した。破骨細胞自身を蛍光タンパク質によってラベル化し,破骨細胞の活性化を蛍光検出することで,生体2光子励起イメージングによる細胞動態のリアルタイム解析が可能となった1)
 さらに,光安定性の高い色素母骨格を用いることによって,レーザー照射下において,長時間に渡り破骨細胞活性の可視化が可能であることを示した(図)2)。本手法を用いることで薬物評価法などの応用が期待できる。

chem-70-02-02.jpg1) T. Kowada et al., J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 17772.
2) H. Maeda et al., Nat. Chem. Biol. 2016, 12, 579.
菊地和也 大阪大学大学院工学研究科