日本化学会

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面不斉Cr およびMn 錯体を基盤とするホスフィン-オレフィン配位子の開発

Development of Phosphine-olefin Ligands Based on Planar Chiral Cr and Mn Complexes

 光学活性なホスフィン,ジエン,ホスフィン︲オレフィン等を支持配位子とする遷移金属錯体触媒を活用した様々な不斉合成反応がこれまでに開拓されてきた
が,最近,面不斉金属錯体上にホスフィン部位とオレフィン部位とを組み込んだ新しいタイプの錯体配位子が創出され,それらが配位したロジウム錯体が一連の不斉反応における優れた触媒として機能することが報告された。
 神川,小笠原らは,面不斉η6-アレーンクロム錯体および面不斉η5-シクロペンタジエニルマンガン錯体上にホスフィン部位とオレフィン部位とを組み込んだ錯体配位子11)22)を合成し,これらがRh(I)中心に配位した異種金属錯体3,4が鎖状エノンに対するフェニルボロン酸の不斉1,4 付加をはじめとする一連の不斉反応の優れた触媒として機能することを見いだした。特に1 のη6-アレーンクロム部位を等電子構造であるη5-シクロペンタジエニルマンガン部位に置換した2 は,1 よりも錯体配位子としての耐久性に優れており,43 よりも高い活性,立体選択性を示すことを報告している。
 3,4 においては,基質分子の活性化と変換とをロジウムサイトが,ロジウム上に不斉反応場を構築する錯体配位子としての機能を面不斉金属錯体ユニットが担い,両者が効果的に協同することで極めて高い活性と立体選択性とが発現されている。

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1) M. Ogasawara, Y.-Y. Tseng, K. Kamikawa et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 9377.
2) K. Kamikawa, Y.-Y. Tseng, M. Ogasawara et al., J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 1545.

松坂裕之 大阪府立大学大学院理学系研究科