日本化学会

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ペプチドのトリプトファン-プレニル化酵素の新展開

Recent Progresses on Peptide-Tryptophan Prenyl Transferases

 タンパク質やペプチドが翻訳された後に起こる様々な化学修飾のことを翻訳後修飾という。その1 つにトリプトファン残基のプレニル化があり,トリプトファンのガンマ位がプレニル化(ゲラニル化またはファルネシル化)され,さらにプロリン様のピリミジン環を新たに形成するという大変ユニークな修飾様式である。この修飾は,枯草菌の形質転換を誘導するペプチドフェロモンであるComXフェロモンから初めて発見され,修飾酵素ComQ によって基質ComX のトリプトファン残基がプレニル化される1)
 今回,シアノバクテリア由来のプレニルトリプトファンを有する環状ペプチドであるカワグチペプチンA を生合成する修飾酵素としてKgpF が報告された2, 3)
興味深いことに,KgpF とComQ とではアミノ酸配列の相同性はほとんどないが,KgpF は,ComXフェロモンと同様の3 環性骨格を有し,立体化学の異なるプレニル(ジメチルアリル)トリプトファン形成の触媒となる。特筆すべきは,どちらのプレニル化酵素も in vitro 反応における基質の許容性が非常に広い点であり,特にKgpF は,トリプトファン単体のFmoc 保護体ですら基質として受け入れ,環化を伴うプレニル化反応の触媒となった3)
 今後はX線結晶構造解析によるプレニル化反応の詳細なメカニズム解明や,生合成リデザインによる修飾酵素を用いたペプチドライブラリーの構築や,新規有用物質の創成に興味が持たれる。

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1)M. Okada et al., Nat. Chem. Biol. 2005, 1, 23.
2)A. Parajuli et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 3596.
3)M. Okada et al., Org. Biomol. Chem. 2016, 14, 9639.

岡田正弘 東京大学大学院薬学系研究科