日本化学会

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性質の異なる層間を交互に有する層状物質

Layered Materials with Alternating Interlayer Spaces

層状物質の層間への分子/イオン(ゲスト)の導入反応(インターカレーション)を利用して,様々な層間化合物が合成されている。層状物質︲ゲストの組み合わせに加え,ゲストの層間での分布も機能を左右する重要な因子である1)。ここでは異なるゲストを層間に交互にインターカレートした層間化合物を中間体として,性質の異なる層間を交互に有する構造を設計した例を紹介する。
 Breu らは層電荷が均一なフルオロヘクトライトの合成に成功し2),その電荷の均一性に基いて,異なるイオンを交互
積層的にインターカレートすることに成功した。さらに,二層シートとして剥離した後ポリマーを固定,二層シート層間
をイオン交換,剥離し,ヤヌスシートの合成に成功したことを報告している(図)3)
 また,特性の異なる二種類の層間を有する層状ニオブ酸K4Nb6O17・3H2Oを二層シートとして剥離した例も報告されている4)。一方の層間のみにアルキルアンモニウムイオンを導入した後に,フェニル基をその層間へグラフトした試料は,二層シートとして剥離した。さらに,このナノシートをエポキシ樹脂中に分散させたことも報告している。
 今後ポリマーなどとの複合体の評価に加えて,層を介しての反応や層間ゲストに起因する特異な機能を有する二層シー
トの合成などへの展開が期待される。

chem70-11-02.jpg1) M. Ogawa et al., Dalton Trans. 2014, 43,10340.
2) J. Breu et al., Chem. Mater. 2001, 13, 4213.
3) M. Stöter et al., Angew. Chem. Int. Ed.2016, 55, 7398.
4) N. Kimura et al., Langmuir 2014, 30, 1169.

宗宮 穣 早稲田大学教育・総合科学学術院