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電気化学1 分子計測への挑戦―ナノ流路電気化学デバイス―

Electrochemical Detection of Single Molecules in a Nanofluidic Device

 Bard のグループが電気化学1 分子計測を報告していたが1),依然として電気化学1 分子計測は困難な課題であった。一方,近年では図のように2 つの電極が100nm 程度の距離で配置されているナノギャップ(ナノ流路)電極デバイスが,電流シグナル増幅に基づく1 分子計測法として開発されている2, 3)。このデバイスは犠牲層エッチングで作製する。犠牲層エッチングとは2 つの層に挟まれた異なる材料を選択的に取り除く技術であり,2 つの層を機械的に分離できる。このデバイス作製では,作用電極,クロム犠牲層,作用電極,絶縁層を積層させた後,クロム犠牲層をエッチングで取り除くことで,クロム層の厚さと同じ高さのナノ流路を作製できる。この手法では通常のリソグラフィー技術のみを用いており,複雑な装置や技術を必要とせずに簡単にデバイスを作製できる。この近接した2つの電極に,それぞれ適切な電圧を印加することで,目的物質がそれぞれの電極上で,酸化と還元反応が繰り返し誘起される(レドックスサイクリング)。これにより得られる電流値が増幅され,1分子を電気化学的に計測できる。さらにレドックスサイクリングの特性を生かし,選択的なドーパミン検出が行われている4)
 また,このナノ流路電極デバイスを組み込んだセンサアレイデバイスが考案されており,高感度かつ迅速な電気化学イメージングが実現している5)。このデバイスでは,計測対象物と電気化学反応をスイッチング素子に用いており,少ないコネクタパッドで多くの電気化学センサを微小チップデバイスに配置できる。このようにナノ流路電気化学デバイスは,電気化学分析において有用ツールであり,今後の更なる発展が期待できる。

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1) F. R. Fan, A. J. Bard, Science 1995, 267, 871.
2) S. Kang et al., Faraday Discuss 2016, 193, 41.
3) S. Kang et al., ACS Nano 2013, 7, 10931.
4) B. Wolfrum et al., Anal Chem. 2008, 80, 972.
5) Y. Kanno et al., Lab Chip 2015, 15, 4404.

伊野浩介 東北大学大学院工学研究科