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メタルフリーな[2+2+1]付加環化型反応による複素環合成法

Constraction of Heterocycles by Metal-free[2+2+1]Cycloadditiontype Reactions

 多成分連結型環形成反応は,単純な原料から複雑かつ高度に官能基化された環状化合物を一段階で構築できることから,アトムエコノミー,ステップエコノミーに優れた手法として近年注目されている。特に,出発物質としてヘテロ原子を含む不飽和化合物を用いた場合には複素環合成法として有用であり,従来,それらの反応には,温和な条件下で不飽和結合を高度に活性化できる遷移金属触媒が多用されてきた。
 筆者らはこれまでに,有機ヨウ素反応剤が遷移金属触媒よりも安価かつ低毒性でありながら類似した反応性を示す点に着目して,有機ヨウ素反応剤による不飽和結合の活性化を基盤とするメタルフリーな複素環合成法を開発してきた1)。その中で最近,アセチレン,ニトリルおよびメタクロロ過安息香酸(mCPBA)由来の酸素原子が連結する,[2+2+1]付加環化型のオキサゾール合成法を見いだした2)。本反応では,系中でビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Tf 2NH)存在下,mCPBA と触媒量のヨードベンゼン(あるいは4︲クロロヨードベンゼン)から発生した三価ヨウ素種によって,二置換および三置換オキサゾールが良好な収率かつ高度な位置選択性で得られる。本手法は,三価ヨウ素触媒による多成分反応の初例であり,金触媒を利用した類似の[2+2+1]付加環化型反応による2,4︲二置換オキサゾール合成法と相補的な関係にある3)。本手法は含窒素ヨウ素反応剤を用いた付加環化型イミダゾール合成へも適用できることから4),今後,より多様な複素環合成法への応用が期待される。

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1) Account : A. Saito, ARKIVOC 2017, 84.
2) A. Saito et al., Org. Lett. 2017, 19, 2506.
3) L. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 2011,133, 8482.
4) A. Saito et al., Adv. Synth. Catal. 2017,359, 3860.

齊藤亜紀夫 東京農工大学大学院工学研究院