大気汚染物質であるNOxをNH3を還元剤として触媒的にN2とH2Oに変換する選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction(SCR))は,高いNOx除去能力を誇り,活性種として銅や鉄をイオン交換したゼオライトは幅広い温度範囲における浄化能力から,高効率な熱機関であるディーゼルエンジンの排ガス浄化にその有用性が認められている。その中でSCRゼオライト触媒には過酷な排ガス組成・温度中でも長時間高い浄化性能を保つ能力が求められる。
現在,高温での高い浄化性能と耐水熱安定性を持つ小細孔ゼオライトが注目されているが,筆者らは,該当ゼオライトへのリン修飾を達成し,その触媒安定性を飛躍的に向上させた1~3)。一般的に小細孔ゼオライトの内部へはリン酸は拡散できず修飾は不可能であるが,本手法では,合成時に細孔内へアルキルホスホニウムをあらかじめ取り込んでおき,それを焼成によって酸化/分解することでリン酸化物種の生成を経由してリン修飾を進行させる。このリン修飾ゼオライトは,リン未修飾体が構造崩壊を起こすような苛烈な水熱処理後も良好なSCR特性を維持できる。合成技術の発展に伴い,一部のゼオライト骨格(AEI,AFX等)の優れたSCR性能が報告されている4)。様々な合成系に適応できる本リン修飾法を適切な骨格に適用していくことで,より効果的なSCR触媒開発が期待できる。
1) T. Sonoda et al., J. Mater. Chem A 2015, 3, 857.
2) Y. Kakiuchi et al., Chem. Lett. 2016, 45, 122.
3) Y. Yamasaki et al., Microporous Mesoporous Mater. 2016, 233, 129.
4) S. V. Priya et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 2018, 91, 355.
津野地直 広島大学工学研究科