日本化学会

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多環状高分子によるSingle-Chain Nanoparticles の構築

Single-Chain Nanoparticles by Multicyclic Polymers

 環状高分子は主鎖末端を持たず,コンフォメーションが限定されているため,組成および分子量が同じである直鎖高分子とは異なる物理的および化学的特性を示す1)。そのため,高分子トポロジーに基づいた機能の追求が盛んに行われており,環状高分子の新奇合成法開発や自己組織化によるナノ構造の構築が研究されている2)。例えば,両親媒性ブロック共重合体により形成されるミセルは,熱安定性が大きく向上することが報告された。一方,Single-Chain Nanoparticles(SCNP)は文字通り1 本の分子鎖から成るナノ粒子であり,触媒や反応場の応用として注目されている物質である3)。最近,このSCNP を多環状高分子で合成するという報告がなされた。
 1 つは,単環状高分子の1 ヵ所にエチニル基とアジ基を有する前駆体を準備し,Click Chemistry を用いた重付加によって構築したものである4)。この結果得られたSCNP は非常に高い密度を示した。
 もう1 つは,両末端にノルボルネニル基を持つ直鎖状前駆体のRing-Opening Metathesis Polymerization(ROMP)を用いた環化重合により合成したものである5)。この手法はブロック共重合化にも応用され,複数の異なる環状高分子から成るSCNP の合成にも成功している。
 これらの報告によって環状高分子のトポロジー効果とSCNP を組み合わせた新奇物質の創成が期待される。

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1) Y. Tezuka, Acc. Chem. Res. 2017, 50, 2661.
2) T. Yamamoto, Y. Tezuka, Soft Matter 2015, 11, 7458.
3) A. M. Hanlon et al., Macromolecules 2016, 49, 2.
4) M. Gavrilov et al., ACS Macro Lett. 2017, 6, 1036.
5) T. Isono et al., Macromolecules 2018, 51, 3855.

山本拓矢 北海道大学