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ナノカーレースⅡ

Nanocar Race Ⅱ

世界初の試みである分子の自動車レース「ナノカーレース」が2017 年4 月フランス・トゥールーズにて開催され,日本からはNIMS-MANA チームが出場しました1)。2021 年にはナノカーレースⅡが開催される予定です2)
 機械的な動きをする「分子機械」が2016 年ノーベル化学賞の受賞テーマとなり,ナノサイズの機械の働きに注目が集まっています。分子機械は,主に溶液中の大多数の平均的な分子の相対的な動きを測定する研究が進められてきましたが,極小の機械として1 分子を自在に操ることはいまだ発展途上です。その中,2017 年,単分子から成る「自動車」のレース,ナノカーレースが初めて開催されることになりました。このイベントは様々な形を有する分子を極低温高真空走査型トンネル顕微鏡にて,探針で押さずに動かすための国際共同研究の場となりました。フランス・ドイツ・スイス・オーストリア・アメリカ・日本から6 チームが参戦し,それぞれ特徴ある分子の単分子制御法を研究しました。日本チームは様々な形に変形できる柔らかい分子を用い,その構造・運動制御に挑戦しました3)
 単分子操作のさらなる発展のため,ナノカーレースⅡが2021 年に予定されています。現在,日本からの2 チームを含む13 チーム(延べ,ヨーロッパ:7 チーム;中国:2 チーム;北米:3 チーム)がプレエントリーしています。今後,有賀克彦教授(物材機構)ら運営員会によりレースルールが決定される予定です。次回レースでは極低温高真空中といった極限環境のみならず,室温常圧でのレースも開催されるとあって,単分子制御のためのルールにも目が離せません。

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1) G. Rapenne, C. Joachim, Nature Rev. Mater. 2017, 2, 17040.
2) https://www.memo-project.eu/flatCMS/
3) W.-H. Soe, W. Nakanishi et al., ACS Nano 2017, 11, 10357.

中西和嘉 物質・材料研究機構