フォトニック結晶は,光の波長程度の周期で屈折率が変化する材料で,"光の半導体"に利用できるとして研究されている。近年では,可視光領域にフォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶が,コロイド粒子などの集積法を利用して構築できるようになり,色を操る材料としても注目されている。
コロイド粒子から成るフォトニック結晶は,その幾何学的な形状も制御可能で,球状のフォトニック結晶を作ることができる1~4)。この球状のフォトニック結晶は,フォトニックボールと呼ばれ,コロイド粒子の粒子径に依存した光学現象を示す。図に粒子径が250nm(a, b)と400nm(c, d)のシリカコロイド粒子から形成されたフォトニックボールの巨視的および微視的発色の様子を示す。両系とも,巨視的には緑色に見えるが,微視的には全く異なる発色性を示す。250nm のコロイド粒子から成るフォトニックボールより生じる色は,ブラッグ反射によって説明できることがわかっている。一方,400nmのコロイド粒子から成るフォトニックボールから見られるような虹色の発色現象の説明に対して,これまでの研究では,格子回折またはブラッ グ反射のみを別々に検討していた。
今回,Ohnuki らは,ブラッグ反射と格子回折の両方の機構が組み合わさることで微視的な虹色と巨視的な緑色の両方を首尾よく説明した。さらに結晶の球対称性から,巨視的な観察による色相は,観察する方向にほとんどよらないことも明らかにした。このようなフォトニックボールは構造色を利用した顔料として利用可能になるかもしれない。
1) N. Vogel et al., PNAS 2008, 20, 4263.
2) M. Teshima et al., J. Mater. Chem. C. 2015, 3, 769.
3) M. Sakai et al., Small 2018, 14, 1800817.
4) R. Ohnuki et al., Adv. Opt. Mater 2019, 7, 1900227.
竹岡敬和 名古屋大学大学院工学研究科