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ゲルネットワーク内での直鎖ポリマーの合成によるヒドロゲルの縫合・接着

Adhesion of Hydrogels Using in situ Synthesis of Linear Polymers Inside Gel Networks

水を高分子や超分子のネットワーク内に閉じ込めた「ヒドロゲル」は,人工筋肉や人工軟骨などの人工組織としての利用が期待されている。そのためにはヒドロゲル同士やヒドロゲルと生体組織の優れた接着手法の開発が必要である。
 これまでに様々なヒドロゲルの接着手法が開発されてきた1~3)。しかしながら,これまでのヒドロゲル接着手法のほとんどは接着のために特別な官能基をゲルネットワーク内に組み込む必要があり,汎用性の面で問題があった。
 筆者らは,ヒドロゲルの内部に高分子の原料を浸透させ,密に接触させた状態で,ゲル内部で直鎖ポリマーを合成することにより,形成された直鎖ポリマーでヒドロゲルのネットワークどうしを縫い合わせ,接着する手法を考案した4)
 さらに酸化還元に応答して重合,分解することのできる直鎖ポリマーを利用し,ヒドロゲル接着に利用した。その結果,ヒドロゲルを酸化還元によって接着・脱着制御することに成功した。
 本研究で報告したヒドロゲルの接着手法は,接着するヒドロゲルに特別な官能基を組み込む必要がない。今後,本手法を利用して,ヒドロゲルの幅広い接着手法の開発,利用が期待される。

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1) L. Leibler et al., Nature 2014, 505, 382.
2) X. Zhao et al., Nat. Mater. 2015, 15, 190.
3) A. Harada et al., Macromolecules 2015, 48, 732.
4) S. Tamesue et al., Macromolecules 2019, 52, 5690.
為末真吾 宇都宮大学大学院工学研究科