日本化学会

閉じる

トップ >化学を知る・楽しむ >ディビジョン・トピックス >コロイド・界面化学 >楕円形状を有するハイドロゲル微粒子の水滴表面における自己組織化

楕円形状を有するハイドロゲル微粒子の水滴表面における自己組織化

Self-Organization of Ellipsoidal Microgels at the Air/ Water Interface

 コロイド粒子の自己組織化は,微粒子のサイズや表面電荷などの特性が強く影響し多様な集積構造を与える。水で膨潤したハイドロゲル微粒子は,界面において大きく変形する等のユニークな挙動を示す。筆者らのグループは,ゲル微粒子のやわらかさが界面挙動に与える影響,特に,ゲル微粒子が気水表面に自発的に吸着・配列し,薄膜を形成するメカニズム1, 2)を明らかにしてきたが,低密度なゲル微粒子は形状制御が困難なため,非球状ゲル微粒子の効果は未解明であった。
 そこで筆者らは,楕円形状を有するゲル微粒子の合成手法を考案し,それらの自己組織化挙動を検討した。得られたゲル微粒子の自己組織化により,頑強な一次元の集積体が形成することを見いだした3)。楕円コアの一次元集積体は時間経過とともに崩壊したのに対し,楕円ゲル微粒子の場合はほとんど崩壊しなかった。この結果は,ゲル微粒子表面のポリマー鎖が気水表面で絡まり合い,構造安定化に寄与したと考えられる。興味深いことに,アルツハイマー病を引き起こすタンパク質凝集の速度論解析と同様に,楕円ゲル微粒子の一次元集積体についても,その形成メカニズムを解析できることがわかり,生体分子との類似性が認められた。この結果はコロイド粒子の自己組織化において,形状・やわらかさの双方が重要であることを示しており,さらに,モデルコロイドとしての知見を深化させることで医療分野の課題を解明する材料への展開も期待できる。

chem72-11-03.jpg

1) K. Horigome et al., Langmuir 2012, 28, 12962.
2) H. Minato et al., Chem. Commun. 2018, 54, 932.
3) K. Honda et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 7294.

本田健士郎・鈴木大介 信州大学大学院総合理 工学研究科