日本化学会

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単層グラフェンナノ多孔体

Sngle-walled Graphene Porous Materials

グラフェンから成る3次元構造体もしくは多孔体は数多く提案されているが,筆者らは「単層グラフェン」を主成分として細孔径が50 nm以下と小さく吸着能に優れる「単層グラフェンナノ多孔体」に特化した研究を進めている。
細孔壁が単層グラフェンで構成されるナノ多孔体としては,ゼオライト鋳型炭素(ZTC)1, 2)とグラフェンメソスポンジ(GMS)3)の2種類がこれまでに報告されている。これらの材料はナノ多孔体としては驚くほど機械的に柔軟であり,応力印加/解放によってナノ細孔のサイズを可逆的に収縮/復元させることができる。ナノの孔をもちスポンジのように応力で柔軟に細孔を変形できる材料としては,他にも特殊な有機金属構造体4)が知られている。筆者は,これら「ナノスポンジ」材料に液体密度でゲスト分子を吸着させておき,これを応力で"絞る"と,ゲスト分子は気体となって放出されることを見いだした。この応力による気液相転移を利用した,新しい概念のヒートポンプ開発を現在進めている5)
GMSは単層グラフェンを主成分としているため2000 m2/g近い比表面積を持つ一方で,カーボンの劣化の起点となるエッジサイトの量が極めて少なく,酸化耐性が非常に高い3)ため,高電圧電気二重層キャパシタの電極材料として有望である。高い容量と耐電圧を両立する材料としては,従来は単層カーボンナノチューブが最高の材料として知られていたが,GMSから作った自立シートは単層カーボンナノチューブを上回る優れた耐久性を発揮する6)

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1) Z. X. Ma et al., Chem. Commun. 2000, 2365.
2) H. Nishihara et al., Chem. Commun. 2018, 54, 5648.
3) H. Nishihara et al., Adv. Funct. Mater. 2016, 26, 6418.
4) I. Beurroies et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 7526.
5) K. Nomura et al., Nat. Commun. 2019, 10, 2559.
6) K. Nomura et al., Energy Environ. Sci. 2019, 12, 1542.

西原洋知 東北大学AIMR