日本化学会

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6種類の天然ピレトリンの全合成および殺虫活性

Total Synthesis of Six Natural Pyrethrins and Their Insecticidal Activities

天然ピレトリンは除虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれる殺虫成分であり,シクロプロパンカルボン酸の一種である菊酸を共通骨格とするPyrethrins IおよびII,Cinerins IおよびII,Jasmolins IおよびIIの6種類から成る。その強い殺虫活性と哺乳類への高い安全性から,人工的な構造展開が検討され,数多くの合成ピレスロイド系殺虫剤が開発されている。しかし,天然ピレトリンは光や酸化に対して不安定であり,各成分は非常に類似した構造を有していることから,最新技術を使用しても天然の混合物から純粋な成分を大量に単離することが困難であった。一方で,個々の殺虫活性や物理学的性状について各成分間の特徴や相違点を明らかにすることが求められてきた1)。田辺らは,p-トシルクロリドおよびN-メチルイミダゾールを用いた縮合反応を経て,これら光学活性体を含む6種類の天然ピレトリンの全合成に成功し,各々の殺虫活性を調査して,Pyrethrin Iが最も高い効力を有していることを明らかにした2)。また,Cinerinについて各異性体の活性を比較したところ,天然型であるCinerin Iが非天然型のCinerin I(天然型の光学異性体)より優れた効力を有していることが確認された。同研究では,天然ピレトリンの包括的な合成も検討しており,既存ピレスロイド系殺虫剤の効率的合成に寄与できると考えられる。また,天然ピレトリン各成分の性質が明らかになったことで,天然由来の殺虫剤の普及がより期待される。

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1) N. Matsuo, Proc. Jpn. Acad. Ser. B. 2019, 95, 378.
2) Y. Tanabe et al., J. Org. Chem. 2020, 85, 2984.

足立剛士 住友化学 生物環境科学研究所