日本化学会

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電場触媒反応場による低温メタン転換

Electric Field Promotes Low-temperature Catalytic Methane Conversions

触媒化学に関連する国の戦略目標として「多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製(2015)」と「持続可能な新たな生産プロセス構築のための革新的反応技術の創出(2018)」が決定され,前者は不活性な低級アルカンの高効率転換,後者は電気や光等の外場を用いた低温触媒プロセスの構築をそれぞれ目標としている。これらを読み解くと,ポスト石油化学として,低温での低級アルカン高効率転換のための外場利用触媒プロセスの実現・確立を目指すべきというメッセージと捉えられる。
筆者らは,これらに先んじて固体触媒に微弱な外部電場を印加することで,200℃以下の低温でメタンから水素・合成ガスやエチレンに転換できることを見いだした1~3)。水蒸気や水素共存下では,電場印加により表面をプロトンが伝導し,このプロトンがメタンに衝突して律速段階であるメタン解離吸着を促進する2)。一方,酸素共存下での遷移金属酸化物触媒上においては,電場印加により電子移動を能動的に制御することで,格子酸素の活性化(電子を奪う)と,この活性酸素種を介した酸化還元サイクルを低温で駆動することが可能となる3)。このように,触媒反応の低温駆動には,外場により表面で電子やイオンの伝導や反応を能動的に制御することが肝要である。今後は炭素循環や窒素循環を指向し,N24)やCO25)を低温で効率的に転換しうる外場利用触媒反応プロセスへの展開も望まれる。

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1) S. Ogo, Y. Sekine, Chem. Rec. 2017, 17, 726.
2) R. Manabe et al., Sci. Rep. 2016, 6, 38007.
3) S. Ogo et al., J. Phys. Chem. C 2018, 122, 2089.
4) K. Murakami et al., Chem. Commun. 2020, 56, 3365.
5) K. Yamada et al., Chem. Lett. 2020, 49, 303.

小河脩平 高知大学農林海洋科学部・海洋資源科学科