日本化学会

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量子ドット-有機分子精密配列構造の光応答性

Photoresponsivity of Ordered Coaggregates of Quantum Dots and Organic Molecules

有機材料と無機材料を融合した有機無機ハイブリッド材料は,融合することで初めて発現するユニークな物性・機能を創出できることから盛んに研究されている1)。例えば,π共役分子と無機材料である量子ドット(数nmの半導体)を組み合わせた場合,量子ドットの示す「強い光捕集力」のおかげで,共存するπ共役分子の励起状態をより高効率で作れる。しかしながら,全く性質の異なる「有機分子と量子ドット」を混合すると,同種同士で集まったマイクロメートルレベルでの層分離構造を形成するため,規則正しく有機分子と量子ドットを配列させることは困難である。
筆者らは,これまでに,有機分子の自己集合を利用することで,量子ドットの自在配列を試みてきた,sup>2)。最近,アゾベンゼン誘導体の集合体に量子ドットを混ぜることで,アゾベンゼン集合体と量子ドット集合体が数nm間隔で交互に配列することを発見した(図参照)3)。さらに,アゾベンゼンのトランス-シス光異性化を利用することで,配列構造の光制御を試みたところ,光照射に伴い配列構造が徐々に崩れていき,量子ドット間で起きていた蛍光共鳴エネルギー移動の効率が減少することが明らかになった。これは,量子ドット配列構造を光で制御した初めての例である。
本研究での知見を活かすことで,分子レベルでの配列制御が鍵となる光電子デバイスの高性能化,および光応答性を示す新規ハイブリッド材料の創製に繋がる。

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1) M. Faustini, L. Nicole, E. Ruiz-Hitzky, C. Sanchez, Adv. Funct. Mater. 2018, 28, 1704158.
2) M. Yamauchi, S. Masuo, Chem. Eur. J. 2019, 25, 167.
3) M. Yamauchi, S. Yamamoto, S. Masuo, Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 6473.

山内光陽 関西学院大学生命環境学部