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AIMECS2021オンライン開催

13th AFMC International Medicinal Chemistry Symposium 2021 Nov. 29th-Dec. 2nd

AIMECSはアジア医薬化学連合(AFMC)が隔年で主催する医薬化学の国際学会で,合成方法論からケミカルバイオロジー,創薬標的の分子生物学までの幅広い分野をカバーする。第13回は,2021年11月29日より4日間の日程でオンライン開催される。一般講演やポスター発表に加え,今回はオンライン開催のため,分野を代表する基調・招待講演者の最新の研究成果を気軽に聞ける,特に貴重な機会となっている。本稿では,3名の講演者の先生を選んで,その研究内容を紹介する。

Prof. Stuart L. Schreiber
ケミカルバイオロジー分野の創始者。リガンドにより2つのタンパク質を二量化させるChemical Inducer of Dimerization(CID)の概念とその重要性を確立した。最近でも,薬剤耐性がんの創薬標的であるGPX4に対する共有結合阻害剤の発見など1),有機分子を基盤とした生命科学への貢献が目覚ましい。CIDの概念は,ホットトピックであるタンパク質分解誘導キメラ分子PROTACへと繋がった。PROTACの創始者であるCraig M. Crewsも,今回のAIMECSで講演を行う。

Prof. Phil S. Baran
複雑天然物の全合成分野の第一人者。天然物合成を通じて,"Ideal Synthesis"を実現するための方法論を次々と発表している2)。例えば,有機電解反応による高難度分子変換やタンパク質の化学修飾反応,オリゴチオリン酸ヌクレオチドのキラル合成法の開発などの実績がある。

Prof. Alice Ting
細胞内で目的タンパク質にperoxidaseやbiotin ligaseを融合し,それらが触媒する反応によって,目的タンパク質と相互作用する生体分子(タンパク質やRNAなど)を網羅的にラベル化する方法(APEX, TurboID)を開発した3)。これらは,世界中の研究者がプロテオミクス研究に用いる基盤技術となっている。


1) J. K. Eaton et al., Nat. Chem Biol. 2020, 16, 497.
2) D. S. Peters et al., Acc. Chem. Res. 2021, 54, 605.
3) K. F. Cho et al., Nat. Protoc. 2020, 15, 3971.

金井求  東京大学大学院薬学系研究科