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分子の自己集合を活用したミニマムケモセンサアレイ

Minimum Chemosensor Arrays with Molecular Self-Assemblies

ケモセンサは,分子間・分子内相互作用を合目的に組み込むことで標的種の認識に伴う情報を我々が知覚できるレベルにまで増幅する超分子センサである。交差応答性を示す当該センサ群をアレイ状に並べたケモセンサアレイは,多彩な光学応答パターンを示すため,多変量解析することで標的種の種類や濃度の判別が可能となる1)。通常,多数の標的種を判別するためにケモセンサアレイでは,ゲスト認識に由来した波長シフトや蛍光強度,吸光度変化を示す無数のケモセンサを並べる必要がある。しかし,アレイを構成する数多くのケモセンサの中で,実際に判別に大きく寄与する分子はごく一部である。有機合成的労力を鑑みれば,ケモセンサの機能を最大限に引き出したミニマムセンサアレイの具現化が望まれる。
筆者らは,上記を指向した取り組みとして,自己集合現象を活用している。すなわち,少数のビルディングブロックを混合するだけでケモセンサが構築され,標的種との結合能の違いに起因した多様な応答パターンが得られる。ごく最近,分子間・分子内相互作用を複数組み入れたケモセンサの設計により,たった1つのセンサから蛍光指紋パターンを創出し,「アレイを使わないパターン認識」によって10種類の光学活性種の同時判別を達成した2)。本アプローチは,標的種に合わせて容易にカスタマイズ可能であり,現在,超分子センサを用いた実試料分析に挑戦している。

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1) Y. Sasaki et al., Coord. Chem. Rev. 2021, 429, 213607.
2) Y. Sasaki et al., Chem. Sci. 2020, 11, 3790.

佐々木由比・南 豪 東京大学生産技術研究所