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環境調和性に優れたジメチルアミン誘導体合成法の開発

Environmentally Benign Method for the Synthesis of Dimethylamines

ジメチルアミノ基は天然物や生理活性物質中にしばしば含まれ,ジメチルアミン誘導体は医薬,農薬,材料に至る様々な分野で活用されている。したがって,入手が容易な原料から環境調和性と経済性に優れた手法でジメチルアミン誘導体を合成することは,化学産業における生産技術の観点から大きな意義をもつ。
ジメチルアミン誘導体の合成は,ホルムアルデヒドを用いた還元的アミノ化の一種であるEschweiler-Clarke反応や,ハロゲン化メチルを用いた求核置換反応により行われてきた。しかし,これらの手法は環境調和性の面で難点が多い。
近年,遷移金属触媒を用い,メタノールによるアミンのメチル化を基軸とする反応が開発され,ジメチルアミン誘導体の合成にも利用されるようになった1, 2)
一方,ごく最近筆者らは,含窒素複素環カルベンを配位子として有するイリジウム錯体触媒の存在下,ジメチルアミン水溶液を用いることにより,各種アルコールのジメチルアミノ化が容易に進行することを見いだした3, 4)。ジメチルアミン水溶液は,入手が容易かつ取り扱いも簡単である。この反応によって,安価なアルコールから付加価値の高いジメチルアミン誘導体を効率的に合成することが可能となった。本反応は,余分の有機溶媒を加えることなく水溶媒系で実施できる。このことから,本手法は環境調和性の観点からも有益であるといえる。
本手法の発展により,有用なジメチルアミン誘導体の合成が,一層広範かつ経済性をそなえて可能になると期待される。

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1) T. T. Dang et al., ACS Catal. 2015, 5, 4082.
2) G. Toyooka et al., Synthesis 2018, 50, 4617.
3) J. Jeong et al., J. Org. Chem. 2021, 86, 4053.
4) 丁 在瑛ほか,日化第101春季年会(2021),P02-1vn-08[優秀講演賞(産業)受賞].

丁 在瑛・藤田健一 京都大学大学院人間・環境学研究科